植毛すれば薬から解放される。そう考えて検討している人は多いと思います。ところが実際は、植毛を受けた人ほど薬を続けていることが多い。理屈が分かると、なぜそうなるかが見えてきます。
移した毛と元の毛は性質が違う
移植に使うのは後頭部の毛です。この毛は男性ホルモンの影響を受けにくく、移した先でも抜けにくい。
一方、前頭部や頭頂部にもともと生えている毛は、影響を受ける性質のままです。移植したからといって、その性質は変わりません。
つまり頭の上に、抜けにくい毛と抜けやすい毛が混在した状態になります。ここが併用の必要が出てくる理由です。
元の毛は進行を続ける
植えた部分は残ります。ただ、その周りにあった元の毛は、何もしなければ薄くなり続ける。
すると数年後、植えた場所だけ毛があって、周囲が抜けた状態になります。境目が線として見える。
この見え方は、最初から全体が均一に薄いより目立つことがあります。だから周囲を維持する手が要る、という話になる。
植毛は「薄くなった場所を埋める」処置であって、「これから薄くなるのを防ぐ」処置ではありません。役割が違います。
境目が出る場所は、だいたい予測がつきます。植えた範囲のすぐ後ろ、つまり移植した部分と元の毛の境界にあたるところです。
ここが薄くなると、植えた部分だけが島のように見えます。正面からは分かりにくく、真上から見たときに出る。
だから術後の写真は真上も撮っておいたほうがいい。自分では気づけない場所です。
順番はどちらが先か
多くの場合、薬で進行を抑えるほうが先に来ます。
| 段階 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 進行を止める | 範囲が動くと設計できない |
| 2 | 状態を見る | 薬だけで戻る部分がある |
| 3 | 足りない場所を決める | 移植する範囲が確定する |
| 4 | 移植する | 必要な量だけで済む |
薬を先に使うと、薬だけで戻る部分が出てくることがあります。その分、移植する範囲が小さくなる。
先に移植してしまうと、本来なら薬で戻った場所にも株を使うことになります。限りある採取量を無駄にする形です。
進行を止める段階は通院しなくても始められます。移植を検討している段階でも、ここを先に動かす価値はあります。
薬で戻る場所と戻らない場所
薬を先に使うのは、範囲を確定させるためだけではありません。戻る場所があるからです。
| 今の状態 | 薬での見込み |
|---|---|
| 細い毛が残っている | 太くなる余地がある |
| 産毛がある | 伸びる余地がある |
| 毛穴はあるが毛がない | 時間がかかる |
| 地肌だけで年数が経っている | 難しい |
毛穴が残っているかどうかが分かれ目です。残っていれば、太らせる方向で戻る余地があります。
ここを移植で埋めてしまうと、本来なら薬で戻った場所に株を使うことになる。採れる量に上限がある以上、これは損失です。
だから半年から1年、薬を先に使って様子を見る。この時間は待ちではなく、必要な株数を減らすための工程です。
併用したときの費用の考え方
移植は一度きりの支払い、薬は続く支払いです。性質が違うので、単純に足して比べると判断を誤ります。
移植だけで済ませようとすると、数年ごとに周囲を追加で埋めることになりかねない。その回数分の費用が乗ります。
薬を続けて周囲を保てば、追加の回数は減る。長い目で見ると、こちらのほうが積み上がりにくいことがあります。
どちらが安いかは進行の速さによります。ただ「植毛したから薬は要らない」という前提だけは、計算のうえでも成り立ちにくい。
薬をやめたときに起きること
併用をやめると、元の毛は再び進行を始めます。植えた毛は残るので、境目が出てくる。
この状態は、追加の移植でしか埋められません。ただ採取できる量には限りがある。
つまり薬をやめるという選択は、将来の選択肢を1つ減らす方向に働きます。
副作用が出てやめざるを得ないこともあります。その場合は自己判断で止めずに、処方した側に相談して代わりの手を出してもらうのが筋です。ここを黙って中断すると、次に相談したときの判断材料が失われます。
内服と外用、どちらを併せるか
併用と言っても、何を続けるかで負担が変わります。
| 続けるもの | 主な役割 | 手間 |
|---|---|---|
| 進行を抑える内服 | 周囲の毛を守る | 1日1回飲む |
| 生やす方向の外用 | 地肌に働きかける | 1日1〜2回つける |
| 両方 | 守りと攻め | 両方の手間 |
移植後の維持という目的なら、周囲を守る側が中心になることが多い。植えた場所を伸ばす目的ではないからです。
外用は頭皮につけるので、術後すぐは使えません。いつから再開できるかは指示に従ってください。
両方続けるほど手間も費用も増えます。どこまでやるかは、続けられる範囲で決めるほうがいい。途中でやめると、やらなかったのと変わらなくなります。
続けられる形に組み替える
理屈のうえで併用が良くても、続かなければ意味がありません。
薬をやめる理由で多いのは、効果を実感できないことと、通うのが面倒になることです。
前者は記録で対処できます。写真を並べれば、止まっていること自体が成果だと分かる。
後者は、通わない形にすると解ける場合があります。移植を受けたところと薬を出すところが別でも問題はありません。
続けやすい形に変えることを、手を抜いていると考える必要はない。止まった時点で失われる分のほうが大きい。
併用が向かない場面もある
全員に併用が要るわけではありません。
傷跡や火傷であとが残って毛が生えない部分の移植は、進行とは関係のない話です。この場合は薬を続ける理由が薄い。
髭や眉への移植も同じで、頭の進行とは別枠で考えます。
自分がどちらの話なのかを整理しないまま、「植毛したら薬は一生」という説明だけを受け取ると、必要のない負担を背負うことになります。何のために続けるのかを聞いておいてください。
あわせて読みたい
- 適応があるか知りたいなら自毛植毛が向く人と向かない人もどうぞ。
- 薬を止める判断についてはAGA治療をやめたときの経過もどうぞ。
移植側の金額を知りたいなら、自毛植毛の費用の記事もあわせてどうぞ。
要点をもう一度
移した毛は抜けにくく、元の毛は影響を受けたままです。性質が違います。
周囲が進行すると境目が出るので、維持する手が要ります。
薬で進行を止めてから範囲を決めると、使う株数が減ります。
傷跡への移植など、併用の必要が薄いケースもあります。
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