「カシミヤ100%」と書かれたマフラーでも、素肌の首筋に当てた感触は同じではありません。むずむずするものと、何も感じないものがある。しかも痒く感じたほうが値段は高いことさえあります。素材表示が同じでも、中身まで同じとは限らない。カシミヤ選びがややこしいのは、ほぼこの一点に尽きます。
洋服には累計で2,000万円ほど使ってきて、いまも年に300万円くらいは出ていきます。そのなかで値段と満足がいちばん一致しないのが小物、とりわけマフラーだと思っています。素材名は必ず表に出るのに、肝心の糸の細さや織りの密度は、売り場のどこにも書かれていないからです。
先に答えを書きます。首に直接当てても痒くなりにくいカシミヤは、ちゃんとあります。 条件は三つ。原毛が細いこと、撚りが強すぎないこと、そして首に巻くことを前提にした寸法であること。この三つが揃っていれば、シャツの襟元から肌がのぞく巻き方をしても、当たりは硬くなりにくい。
この記事を書いた人
30代前半メンズ、都内在住。大手製薬企業 → 大手EC企業 → 大手メーカー企業と、現在3社目です。ファッションや美容といった身だしなみのことから、生活を豊かにするガジェット類、インテリアや雑貨まで、実際に使ってよかったものを発信しています。
洋服には累計で2,000万円ほど、いまも年間300万円くらい使っています。綺麗め・大人シンプルが軸ですが、着るものの幅は広いほうです。スーツは既製もオーダーも実際に買って比べましたし、「高いものが正解だった買い物」も「値段ほど差がなかった買い物」も、同じくらい経験してきました。
だからこのブログでは、値段ではなく、どこを見れば外さないかを書いています。手元にないものは「レビュー」とは書かず、条件で振り分ける形にしています。
首に当てて痒くなりにくいカシミヤは、細い糸で織られている
痒みの正体は、繊維の先端が皮膚を押し返す硬さです。太い毛は束ねても一本ずつが立ってしまい、その先端が首の皮膚に点で当たる。細い毛は同じ力で押されるとしなって逃げるので、点にならず面で触れます。カシミヤがやわらかいと言われるのは、この「しなる」側の繊維だからで、裏を返せばカシミヤでも太い原毛を使えば当たりは硬くなるわけです。
だから見るべきは、素材名の後ろ側。どれくらい細い糸で、どれくらいの密度で織ってあるのか。そして首に巻いたときにどう落ちるのか。ここから、価格帯の違う3本を並べて、その差が実際にどこへ出るのかを追っていきます。用途で振り分けると、こうなります。
| 型 | 向いている人 | 寸法と仕様の要点 |
|---|---|---|
| TAKEO KIKUCHI 洗えるカシミヤマフラー | カシミヤの1本目として自宅で洗って気軽に使いたい人 | カシミヤ100%で洗える仕上げ |
| ジョンストンズ WA000016 | スーツにもコートにも通す定番を長く1本持ちたい人 | 180×25cmの小判マフラー |
| ジョンストンズ WA000056 | 屋外にいる時間が長く肩掛けまでして防寒に使う人 | 190×70cmの大判ストール |

痒みが出るかどうかは、原毛の太さと毛足の処理で決まる
細い糸は、首に当たっても点にならない
同じカシミヤという表示でも、原毛の太さには幅があります。細い原毛だけを選り分けて紡いだ糸は、本数を増やさないと同じ太さにならないので、当然コストが上がる。価格差のうち少なくない部分は、この選別に払っています。売り場で首筋に当ててみて、ふわっと沈む感触なら細い糸。押し返してくる感触なら太い糸。この判定はかなり当たります。
試着ができない通販で買うときも、考え方は同じです。同じカシミヤ100%という表示で価格が二倍違うなら、その差はデザインではなく糸に出ている可能性が高い。ブランドの知名度だけで説明がつく差なのか、それとも織りの密度まで含んだ差なのか。ここを見分けられるようになると、無駄な買い物が減ります。
撚りが強い糸は、丈夫な代わりに硬い
糸は撚りが強いほど丈夫になり、毛玉も出にくくなります。ただし硬い。撚りを甘くすれば空気を含んで当たりはやわらかくなりますが、今度は摩擦に弱くなって毛玉が出やすくなる。マフラーは首とコートの襟に一日中こすられ続ける小物なので、このバランスがそのまま使い心地になって出てきます。触っただけで気持ちいいと感じるものは、たいてい毛玉と引き換えです。
洗える仕上げのカシミヤは、入口として理にかなっている
洗えるカシミヤは、水で縮まないように繊維の表面を整えてあります。この処理をかける前提で作ると、そもそも扱いやすい細さの原毛を選ぶことになる。つまり「洗える」という機能の裏側で、チクチクしにくい方向にも寄っている。1本目としてこの手のマフラーを勧めるのは、そういう理屈からです。
TAKEO KIKUCHIの洗えるカシミヤは、カシミヤ100%で9,900円。洗える仕上げを前提に糸を整えてある型なので、通勤でシャツの上から使う分にはまず困らないはずです。汗をかいてもクリーニングを待たずに洗えるのは、毎日首に当てる小物として大きい。シーズン中に何度も洗える前提だと、そもそも使い方が雑でよくなります。
ただし糸は太めで、英国製が持つ密度感や、巻いたときに縦へすとんと落ちるドレープまでは出ません。色柄も毎シーズン入れ替わるため、気に入っても翌年に同じ物を買い直せない。セール時の実売が前提の値段なので、通常の値付けだと割高に感じるはずです。それでも「カシミヤが自分の首に合うのか」を自分の肌で確かめる1本としては、これ以上の候補を僕は知りません。
TAKEO KIKUCHI(タケオキクチ)洗えるカシミヤ カシミヤ100% マフラー
参考価格 9,900円前後
予算1.5万円以下。カシミヤの1本目で、自宅で洗いたい人
寸法が変われば、同じブランドでも別の道具になる
カシミヤは価格差の話ばかりが取り上げられます。でも実際に使い心地を分けているのは寸法です。ジョンストンズには、同じカシミヤ100%で180×25cmの小判と、190×70cmの大判があります。価格は倍近く違うものの、その差の大きな部分は面積。だから「どちらが上か」ではなく「どこで使うか」で決めるのが正解でした。
180×25cmは、首に巻くための寸法
幅25cmは、二つ折りにすれば首にちょうど収まります。ジャケットの襟の内側に入れても嵩張らず、コートを羽織ったときに胸元が膨らまない。180cmという長さは、ひと巻きして垂らしても、二重に巻き込んでも成立する余裕があります。スーツの日もコートの日も同じ1本で通せるのは、この寸法だからです。実売は24,800円で、長く使う定番としてはここが現実的な線でしょう。
英国製の密度で織られているぶん、首に当たる面はやわらかく出ます。カシミヤの痒みを気にしている人が最初に基準として持つべきなのは、この密度だと思います。ここを一度知っておくと、他の1本を触ったときに「これは太い」と即座に分かるようになる。基準がない状態で何本も比べても、結局は値札を見て決めることになります。
弱点もはっきりしています。無地はとにかく地味で、写真に撮っても何も映らない。並行輸入品が多く出回っていて、同じWA000016でも店によって値段の開きが大きく出ます。そして幅25cmでは肩は覆えないので、真冬の屋外に立ち続ける用途だけを想定すると、防寒としては物足りません。あくまで街と室内を行き来する人のための寸法です。
Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)カシミヤ プレーンマフラー 180×25 WA000016
参考価格 24,800円前後
本命。2万円台で長く使う定番を1本、スーツにもコートにも通す人
190×70cmは、肩まで覆うための寸法
同じブランドのカシミヤ100%のまま、幅を70cmまで広げたのが大判のWA000056です。寸法の違いが値段にどう乗るのかを、素材を揃えたまま確かめられる貴重な比較材料でもあります。肩から掛けてしまえば、覆う面積が首まわりだけの小判とは前提がまるで違う。屋外で人を待つ時間が長い冬に、あるかないかで体感が変わる種類の1枚です。
一方で、190×70cmは持ち歩くと確実に嵩張ります。そもそもこれはマフラーではなくストールで、無理に首へ巻けば厚みが出て、ジャケットの襟には収まりません。実売は46,980円ですが、並行輸入と正規品で価格の幅が大きく、同じ型番でも店ごとに差が出ます。どれを買うかは自分で見極める必要がある。面積が広いぶん、毛玉の管理をする範囲も増えます。防寒の道具として割り切って持つなら強い、という性格でしょう。
ピューテリーのダウンジャケットのようなフード付きの厚手アウターと合わせるなら、フードの外側から肩に回す掛け方が収まります。首まわりにフードとストールを重ねずに済むので、上半身が団子にならずに片付く。
Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)カシミヤ 大判ストール 190×70 WA000056
参考価格 46,980円前後
長く使う上位。屋外にいる時間が長く、肩掛けまでして防寒に使う人
巻き方を三つ持っておくと、同じ1本が長く使える
マフラーは巻き方で体感温度が変わります。同じ180cmでも、垂らすのと巻き込むのとでは首まわりに残る空気の量が違う。僕が使い分けているのは、次の三つだけです。
一重で前に垂らす
いちばん軽い巻き方で、室内に入っても暑くなりません。コートの前を開けて歩く日や、そこまで寒くない朝はこれで足ります。ジャケットの襟の上に置くだけなので、生地の落ち方がそのまま見える。密度のある小判ほど、この巻き方が向いています。
首に二重に巻き込む
180cmあれば、二重に巻いてもまだ端が残ります。首の後ろから前へ回して、片方の端を輪に通す。これで隙間が消えて、風が入らなくなる。真冬の朝はほぼこの形です。厚みが出るぶんジャケットの襟には収まりにくいので、コートの外側に出す前提で使います。
肩に掛けて前で交差させる
大判の使い方です。首には巻かず、肩から掛けて胸の前で交差させる。首まわりが自由なまま、上半身の面積を覆えます。屋外で立って人を待つ時間が長い日は、この形がいちばん理にかなっています。小判の幅では肩に留まらず、掛けてもすぐに落ちてしまう。

色は、写真映えではなくコートから決める
無地のカシミヤは、正直なところ写真に映りません。売り場で並んでいても地味に見える。ただ、毎日使うものは地味なほうが破綻しない、というのが何年か見てきた実感です。手持ちのコートが濃紺やチャコールなら、同系色でつないで縦を長く見せるか、明るいグレーで首元だけ抜くか。この二択でだいたい足ります。
1本目に選ぶなら、無地か、コートの色に馴染む落ち着いたチェック。大柄で目を引くものだけは避けてください。細かい格子であれば、離れて見れば無地に近く見えるので、コートとの相性で困ることはほとんどありません。逆に色数の多い柄物は最初の一週間こそ楽しくて、そのあと出番が減っていく。僕も何本か通った道です。
スーツの日は、襟の内側に入れるか外に出すかで決まる
スーツにマフラーを合わせるとき、僕が迷わないようにしているのは一点だけ。ジャケットやコートの襟の内側に収めるのか、外に出して見せるのかを先に決めます。内側に入れるなら幅の狭い小判、外に出すなら厚みがあっても構わない。ここを決めずに巻くと、首まわりだけが盛り上がって、上半身の線が崩れます。
コートを脱いだあとの姿も一緒に考えておくと安心です。室内でマフラーを外すなら、外した1本を持ち歩くことになる。かさばる大判のストールは、この場面で少し扱いに困ります。通勤と会食が続く日は、迷わず小判を選ぶのが無難でしょう。
何本持つのが現実的か
マフラーは、1本あれば冬を越せます。ただ、洗える1本と洗えない1本を持っておくと、寒さが続く時期にきちんと回せる。カシミヤは一日使うと湿気を含むので、翌日そのまま巻くより、一晩休ませたほうが形が戻ります。ハンガーに掛けず、平らな場所に広げておくだけで十分です。
僕は平日用と休日用で分ける形に落ち着きましたが、最初から複数を勧めるつもりはありません。まず1本目で自分の首がカシミヤに合うかを確かめて、合うと分かってから密度の高い1本へ進む。この順番がいちばん無駄が出ない。逆をやると、高い1本を買ったのに肌に合わず、箪笥の中で一冬が終わります。
通販モールで買うときは、値段より先に出品の素性を見る
海外ブランドのカシミヤは、通販モールだと正規輸入品・並行輸入品・中古が同じ検索結果に並びます。型番が同じでも流通経路が違うので、値段の幅はそこから生まれている。安いから偽物、高いから正規、という単純な話でもありません。
僕が見るのは三つ。商品名や説明に並行輸入と書かれているか、タグや箱の有無に触れているか、そして中古なら毛玉と使用感の記載があるか。この三つが書かれていない出品は、値段が魅力的でも見送っています。カシミヤは実物の当たりが全てなので、状態が分からない買い物とは相性が悪い。
買う前に確認しておくこと
- 表示は素材名だけか、糸や産地まで書かれているか
- 首に巻く寸法か、肩に掛ける寸法か
- 正規輸入・並行輸入・中古のどれか
- 中古なら毛玉と使用感の記載があるか
毛玉と洗いの手間は、買った日から始まる
カシミヤの毛玉は、摩擦が起きる場所に決まって出ます。コートの襟の内側、鞄のストラップが当たる肩口、そして顎の下。防ぎ切るのは無理なので、出たら早めに取るのが唯一の対処になります。僕は毛玉取り器ではなく、小さなハサミで根元から切る方法に落ち着きました。器械は生地ごと薄くしてしまうことがあるからです。
洗える仕上げのものは、表示に従って自宅で洗えます。洗えない表記のものは、シーズン終わりにクリーニングへ出して、乾いた状態で畳んで仕舞う。吊るしたままにすると、自重で片側が伸びます。この一手間を省くと、翌シーズンに出したときに形が崩れていて、結局は買い直しでしょう。
小物の手入れをまとめて見直したい人は、メンズの小物選びのほうにも普段使っている物を書いています。
冬の装いをもう少し詰める
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3本を並べて分かった、価格差の中身
洗えるカシミヤの1本と、180×25cmの小判、そして190×70cmの大判ストール。この三つを寸法と価格で並べて分かったのは、価格差が均等に効くわけではないということでした。1万円から2万円台へ上がるところでは、糸の細さと織りの密度がはっきり変わります。価格差の大半はここに払う部分で、当たりのやわらかさや巻いたときの落ち方に出やすいのもこの帯です。
一方、小判から大判への差額は、質ではなく面積に払っています。ブランドも組成も同じまま幅を広げただけなので、首に当たる感触が変わるわけではない。だから「もっと良いカシミヤが欲しい」と思って大判へ手を伸ばすと、期待とずれます。欲しいのが暖かさなのか、当たりのやわらかさなのか、そこを分けて考えたほうがいい。
今年の冬、首元をどこに置くか
カシミヤのマフラーは、値段の順に良くなる商品ではありませんでした。細い糸で織られた180×25cmは、スーツにもコートにも通せて、首に当てても痒くなりにくい。屋外の時間が長いなら190×70cmの大判ストールが効きます。そして、そもそも自分の肌がカシミヤに合うのかを確かめたいなら、洗える1本から入ればいい。
僕は用途を分けて選ぶ前提でこの3本を並べていて、優劣では選んでいません。1本で全部を賄おうとすると、どの場面にも中途半端になる。今年の冬にどこで何時間過ごすのか、そこさえ決まれば、選ぶ1本はおのずと絞れます。
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※本記事はプロモーションを含みます

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