掘り起こしたばかりの土のにおいがする、甘くない根菜の香りです。ひと吹き目から土が先に立ち、中心にはニンジンの種から採るキャロットシードの温もり、下からはベチバーが支えます。3〜4時間で静かに引いていく短さも含めて、名前の甘さとの落差を面白がれる人に向く一本。
さつまいもとニンジン。名前だけなら、焼き芋のような甘い香りを想像するはずです。ビュリーのオー・トリプル パタットドゥース・デ・カライブ・エ・キャロット・ダフガニスタンは、その予想を最初のひと吹きで裏切ります。前に出るのは甘さではなく、掘り起こしたばかりの土のほう。このずれが、この一本のいちばん面白いところです。
この記事でわかること
- 甘い名前と中身のずれ(焼き芋ではなく、掘りたての土)
- アルコールを使わない作りが、つけた瞬間と持ちに何をもたらすか
- 持続3〜4時間・拡散は穏やかという性質に合う季節と場面
- 75mLで23,210円という価格の受け止め方
結論:名前は甘く、中身は掘りたての土
総合評価:4.0 / 5.0 ★★★★★
この香水を一言でいえば、収穫の瞬間のにおいです。さつまいももニンジンも調理していない状態で写されているので、焼き芋のような甘さは出てきません。前に出るのは土で、甘さは輪郭をなぞる程度。中心にキャロットシードの温もりが座り、根から採るベチバーが下を支えます。
アルコールを使っていないぶん、ひと吹き目から完成した香りが立ち上がります。かわりに持続は3〜4時間と短く、拡散も穏やか。強く長く香らせたい人には向きませんが、肌への刺激が出にくく、外出先でも人前でつけ直せる作りでもあります。秋の休日に肌へ直接置く一本と考えるなら、候補に入る香りです。
ビュリー オー・トリプルの基本情報
| ブランド | オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー(1803年創業・2014年復刻) |
| 商品名 | オー・トリプル パタットドゥース・デ・カライブ・エ・キャロット・ダフガニスタン |
| 容量 / 価格 | 75mL:23,210円 |
| 香調 | ニンジン(キャロットシード)/さつまいも/ベチバー |
| 系統 | 根菜と土を主役にしたウッディ。アルコール不使用の水性 |
| 題材 | 菜園を題材にしたコレクション〈レ・ジャルダン・フランセ〉 |
菜園を題材にしたコレクション
〈レ・ジャルダン・フランセ〉は、菜園を題材にしたコレクションです。公式は18〜19世紀の植物学者の情熱と好奇心、種子と苗のアンティークコレクションから着想を得たと説明しています。修道院の畑の野菜や香草、耕されたばかりの土の匂いまでが題材です。
香水の題材は、花・果実・木・樹脂にほぼ限られてきました。野菜が使われることは、ほとんどない。ビュリーはそこに野菜は香水界で忘れられてきたのではないかという問いを立てています。食材ならグルマンという分野がありますが、そこで扱うのは菓子や飲み物です。
| 香水でよく使う題材 | このコレクションが扱う題材 |
|---|---|
| バラ、ジャスミンなどの花 | きゅうり、ビーツ、ニンジンなどの野菜 |
| 柑橘、ベリーなどの果実 | クレソン、パセリ、バジルなどの香草 |
| 白檀、杉などの木 | 耕したばかりの土 |
香りをレビュー:甘い名前と、掘りたての土のにおい
名前と中身のずれには、はっきりした原因があります。さつまいももニンジンも、調理していない状態で写されている。焼き上がりの甘さではなく、畑から抜いた直後の姿が題材です。そこを取り違えると、期待と実物が最後まで噛み合いません。
期待とのずれ:焼き芋の甘さは出てこない
さつまいもと聞けば、まず焼き芋のねっとりした甘さが浮かびます。この香りに、その甘さはありません。生の根菜が持っているのは土の匂いで、甘さは輪郭をなぞる程度にとどまります。しかも根から採るベチバーが土の側を後押しするので、菓子のようなグルマンには寄っていかない。甘い名前を入り口にして買うと、いちばん外しやすい一本です。
つけた瞬間:助走がなく、土が先に立つ
アルコールを使っていないので、この香水には最初の数十秒がありません。一般的な香水は、つけた直後こそアルコールの匂いに支配され、そこが抜けてから本体が出てきます。オー・トリプルはその段取りを飛ばして、ひと吹き目から完成した香りが立つ。前に出るのは、公式が「土から頭をのぞかせたばかりの根菜の新鮮な香り」と書いたとおりの方向です。近いのは台所ではなく、収穫の瞬間。
持続:3〜4時間、中心はキャロットシード
肌に残る時間は3〜4時間ほどで、一般的な香水より短めです。そのあいだ下を支えるのがベチバーで、ウッディでグルマンな温度を敷いています。中心にいるのは、ニンジンの種から採るキャロットシード。肌の質感を表現するのによく使われる原料です。公式が「悠久の時を経て中央アジアから到来した、ニンジンの優しい温もりと素朴な香り」と書くのも、この素材の性質を踏まえてのことでしょう。長い余韻を追う香りではありません。土と温もりが同居したまま、短く引いていきます。
香りの構成
| 原料 | 役割 |
|---|---|
| ニンジン | 土と甘さ。香りの中心 |
| さつまいも | まろやかでスパイシーなアクセント |
| ベチバー | 根。ウッディでグルマンな温度 |
3つとも地面の下で育つもので揃えられています。ベチバーもイネ科の植物の根から採る原料なので、土という一点で方向がぶつからない。中心のニンジンが土と甘さを出し、さつまいもがまろやかでスパイシーな側に振り、ベチバーが下から温度を支えます。
アルコールを抜くと、香りの出方が変わる
オー・トリプルの土台はアルコールを使わないことです。香料は油に近い性質を持つので、水とは本来混ざりません。ドレッシングが分離するのと同じ理屈で、それを混ぜたまま安定させる混和性水溶液を、公式は2年かけて開発したと説明しています。
| 観点 | 一般的な香水 | オー・トリプル |
|---|---|---|
| 溶媒 | アルコール | 水 |
| つけた瞬間 | アルコールのツンとした刺激 | 刺激がなく、最初から香りが立つ |
| 肌への負担 | 乾燥を感じることがある | 刺激が出にくい |
| 持続 | 5〜8時間ほど | 短い。3〜4時間が目安 |
アルコールには、香りを飛ばして遠くまで運ぶ力もあります。それが無いぶん、拡散と持続では不利になる。肌へのやさしさと引き換えに持ちを捨てている、というのがこの香水の設計です。
合う季節と場面:秋の休日に、肌へ直接つける
この香りがいちばん収まるのは秋です。根菜と土という題材が季節の空気と同じ方向を向くので、気温が下がるほど無理がなくなります。逆に夏の日中は分が悪い。土の要素が汗と混ざると、狙っている方向から離れていきます。
| 場面 | 向き | 理由 |
|---|---|---|
| 秋 | ◎ | 根菜と土が季節に合う |
| 休日の外出 | ◎ | 穏やかで押し付けない |
| 職場 | ○ | 水性で拡散が控えめ |
| 夏の日中 | △ | 土の要素が汗と混ざる |
時間帯は、朝につけたら昼過ぎには薄れている前提で考えます。一日を通したいなら途中で足すことになる。そこで助走のない作りが効いてきます。外出先で吹き足しても直後から香りが完成しているので、人前でつけ直せるほうの香水です。
持ちの短さと付き合う
- 朝と昼の2回に分けてつける
- 拡散が穏やかなので、首すじなど上半身でも失礼になりにくい
- 服より肌のほうが本来の出方をする
もともと広がる量が小さいので、顔に近い位置に置いても押し付けがましくなりません。職場でも成立するのはそのためです。ただし、すれ違いざまに気づかせる種類ではない。近い人にだけ届くものと考えておけば、期待を外さずに済みます。
作っているブランド
オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリーは、1803年のパリで生まれた美容薬局を2014年に復刻したブランドです。創業者ジャン=ヴァンサン・ビュリーの名前と処方を引き継ぎ、内装から包装まで19世紀の意匠で統一しています。
残念なところ
持続が短いのは避けようがありません。アルコールを使わない以上、構造的な制約です。
価格も安くない。75mLで23,210円は、同容量の一般的な香水と比べても高い部類に入ります。
拡散も穏やかです。香りで存在を主張したい人には向きません。
試せる場所も限られます。国内の売り場は数が少なく、地方だと現物に触れる機会がほぼありません。水性香水は比較対象そのものが少ないジャンルなので、想像で買うことになりがちです。
名前が長く、覚えにくい。人に説明するときの障壁になります。
土の匂いも好みが分かれます。根菜を扱う以上、避けようがない要素です。
並べた短所は、どれも作りの裏返しです。持続が短いのはアルコールを抜いた結果で、そのぶん肌への刺激が出にくい。拡散が控えめなのも同じ理由から来ていて、距離の近い場所ほど扱いやすくなります。土のにおいと長い名前にしても、人と被らない一本を探しているなら手がかりのほう。短所を承知のうえで選べる人には、選ぶ理由のほうが残ります。
容量の選び方
日本では公式オンラインと直営店で買えます。国内に路面店と百貨店の売り場があります。
| 容量 | 価格 |
|---|---|
| 75mL | 23,210円 |
オー・トリプルは香りの種類にかかわらず同じ価格です。選ぶ基準が値段ではなく香りだけになるので、そこは分かりやすい。
| 買う場所 | 価格 | 注意 |
|---|---|---|
| 直営店・公式 | 定価 | 試してから買える。名入れにも対応 |
| 百貨店の売り場 | 定価 | 取扱店舗は限られる |
| 通販の転売品 | 上下する | 保管状態が読めない |
ビュリーには、ボトルにカリグラフィーで名入れをするサービスがあります。店頭でその場で書いてもらう形で、贈り物にする人が多い。同じ価格でも、この一手間があるかどうかで買い物の性格が変わります。
買う前に
2万3千円を超える買い物になります。しかも水性香水は数が少なく、比較対象を持っている人のほうが稀です。少量から試す方法を持っておくと、この価格帯でも踏み出しやすくなります。
あわせて読みたい
- 水性香水の使用感を知りたいなら、ベルカンヌを実際に使ったレビューもどうぞ。
- 同じブランドのビュリー ベトラーヴ・ディラク・エ・リュバーブ・デジプト、ビーツの甘もどうぞ。
まとめ:甘い名前を裏切る、収穫のにおい
ニンジンはキャロットシードとして香水に長く使われてきた素材です。野菜を扱うこのコレクションでは、最も香水として自然に成立している一本といえます。
ただし名前は甘く、中身は掘りたての土から立ち上がる。この落差を面白がれるかが分かれ目です。持続は3〜4時間と短く、拡散も穏やか。秋の休日に肌へ置く一本として考えるなら、候補に入ります。
向くのは、香りで自分の存在を主張しない人です。広がる量が小さいので、届くのは近い距離にいる人まで。すれ違いざまに気づかせたい向きには物足りませんが、職場のように距離が近い場所では、そのおとなしさがそのまま扱いやすさに変わります。
価格は75mLで23,210円。同容量の一般的な香水と比べても高い部類に入ります。国内の売り場が少なく、地方だと現物に触れる機会がほぼないことも重なるので、いきなり一本買うより少量から試すほうが確実。土のにおいを受け入れられるかどうかさえ分かれば、あとは迷う要素の少ない香りです。
※本記事はプロモーションを含みます

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