フランスのブランドが日本の建築技法を香りにした、という一本があります。ビュリーのオー・トリプル スミ・ヒノキ。着想の元は京都の町家に使われる焼き杉です。僕はこれを持っていないので、公式が公表している内容から読み取れることを整理します。
炭という字が持つ3つの意味
公式は「日本語でスミとは炭、墨、純をあらわします」と説明しています。この3つを重ねているのが、まず面白いところです。
焼き杉というのは、板の表面を焼いて炭化させてから使う日本の技法です。腐りにくくなり、虫もつきにくい。京都の町家の外壁に使われてきました。
つまりこの香りが写しているのは木を焼いた匂いであって、生木ではありません。森林浴の爽やかさを期待すると、方向が違います。
原料の並び
公式の説明は「燻した日本スギのスモーキーなエッセンスをとらえた香り」。そこに青々とした杉、レザー、ガイアックウッドのベチバー、ヒノキの優しさが重なります。
| 原料 | 役割 |
|---|---|
| 燻した杉 | 焼き杉。この香りの中心 |
| ヒノキ | 日本の建材。清潔で明るい木 |
| レザー | 焦げと革。深さを作る |
| ガイアックウッド、ベチバー | 燻した質感と土 |
| ネズの実 | ぴりっとした刺激。ジンの原料でもある |
ネズの実はジュニパーベリーのことで、ジンの香りづけに使われる素材です。針葉樹の青さと苦みを持ち、煙の重さに通り道を作ります。
水性香水という作り
オー・トリプルの特徴はアルコールを使っていないことです。公式は2年をかけて開発した混和性水溶液だと説明しています。香料は本来アルコールに溶かすもので、水には溶けません。そこを技術で解いた、というのがこの香水の売りです。
| 観点 | 一般的な香水 | オー・トリプル |
|---|---|---|
| 溶媒 | アルコール | 水 |
| つけた瞬間 | アルコールのツンとした刺激 | 刺激がなく、最初から香りが立つ |
| 肌への負担 | 乾燥を感じることがある | 刺激が出にくい |
| 持続 | 5〜8時間ほど | 短い。3〜4時間が目安 |
アルコールは香りを飛ばす力も持っています。それが無いぶん、拡散と持続では不利になる。肌へのやさしさと引き換えに持ちを捨てている、というのがこの香水の設計です。
香料は油に近い性質を持つため、水とは本来混ざりません。ドレッシングが分離するのと同じ理屈です。そこを混ぜたまま安定させる技術が、この香水の中身にあたります。公式が2年という開発期間をわざわざ書いているのも、そこが商品の核だからでしょう。
つけた瞬間の刺激がないという点は、実際に使う場面で効いてきます。一般的な香水は最初の数十秒がアルコールの匂いに支配されるので、人前でつけ直すのがためらわれる。その制約がありません。
つけ方と付き合い方
アルコールの刺激がないので、つけた直後から完成した香りが立ちます。一般的な香水のように「最初の数分は様子を見る」必要がありません。
持ちの短さと付き合う
- 朝と昼の2回に分けてつける
- 拡散が穏やかなので、首すじなど上半身でも失礼になりにくい
- 服より肌のほうが本来の出方をする
すれ違いざまに気づかせる種類の香りではありません。近い距離にいる人にだけ届く、と考えておくと期待を外しません。
日本人が嗅ぐとどう感じるか
焼き杉も檜も、日本人には馴染みの深い匂いです。だから最初のひと嗅ぎで情景が立ち上がる。香水として珍しいというより、知っている匂いが香水になっている驚きのほうが先に来ます。
| 場面 | 向き | 理由 |
|---|---|---|
| 秋冬 | ◎ | 煙と樹脂が気温の低い時期に整う |
| 和装 | ◎ | 題材と正面から噛み合う |
| 職場 | ○ | 拡散が穏やかなので使える |
| 夏の日中 | △ | 汗と混ざると煙が濁る |
ブランドについて
オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリーは、1803年のパリで生まれた美容薬局を2014年に復刻したブランドです。創業者ジャン=ヴァンサン・ビュリーの名前と処方を引き継ぎ、内装から包装まで19世紀の意匠で統一しています。
引っかかるところ
持続が短いのは避けようがありません。アルコールを使わない以上、構造的な制約です。
価格も安くない。75mLで23,210円は、同容量の一般的な香水と比べても高い部類に入ります。
拡散も穏やかです。香りで存在を主張したい人には向きません。
試せる場所も限られます。国内の売り場は数が少なく、地方だと現物に触れる機会がほぼありません。水性香水は比較対象そのものが少ないジャンルなので、想像で買うことになりがちです。
煙と革の方向は好みがはっきり割れます。線香や焚き火を連想する人もいて、日常でまとうことに抵抗を覚えるかもしれません。
容量と買い方
日本では公式オンラインと直営店で買えます。国内に路面店と百貨店の売り場があります。
| 容量 | 価格 |
|---|---|
| 75mL | 23,210円 |
オー・トリプルは香りの種類にかかわらず同じ価格です。選ぶ基準が値段ではなく香りだけになるので、そこは分かりやすい。
| 買う場所 | 価格 | 注意 |
|---|---|---|
| 直営店・公式 | 定価 | 試してから買える。名入れにも対応 |
| 百貨店の売り場 | 定価 | 取扱店舗は限られる |
| 通販の転売品 | 上下する | 保管状態が読めない |
ビュリーには、ボトルにカリグラフィーで名入れをするサービスがあります。店頭でその場で書いてもらう形で、贈り物にする人が多い。同じ価格でも、この一手間があるかどうかで買い物の性格が変わります。
買う前に確かめる
2万3千円を超える買い物になります。しかも水性香水は数が少なく、比較対象を持っている人のほうが稀です。少量から試す方法を持っておくと、この価格帯でも踏み出しやすくなります。
あわせて読みたい
- 水性香水の使用感を知りたいなら、ベルカンヌを実際に使ったレビューもどうぞ。
まとめ
スミ・ヒノキは、日本の焼き杉という技法を香りにした一本です。生木ではなく焼いた木を写しているので、爽やかさではなく煙と深みが前に出ます。
日本人にとっては馴染みのある匂いが、フランスの水性香水になって返ってきた形になります。持続の短さを受け入れられるなら、他にない一本です。
※本記事はプロモーションを含みます









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