自毛植毛の説明を読むと、術式の名前が出てきます。難しそうに見えますが、違いは「後頭部からどう採るか」だけです。植える側の作業はほぼ同じ。採り方が違うと、傷跡の出方と回復にかかる時間が変わります。
違うのは採取のしかただけ
どちらの術式でも、後頭部の毛を採って薄い部分に移すという流れは変わりません。分かれるのは最初の工程です。
1つは、毛穴を1株ずつくり抜いて採る方法。もう1つは、頭皮を細長い帯状に切り取って、そこから株を切り分ける方法です。
植える工程は共通なので、「どちらが自然に見えるか」は術式ではなく配分の設計で決まります。ここを混同した説明を見かけますが、別の話です。
1株ずつくり抜く方法
直径1ミリ弱の器具で、毛穴を1つずつ丸く抜き取ります。縫合が要らないので、傷は点として残ります。
この方法の特徴
- 傷は点状で、髪が伸びれば見えにくい
- 縫わないので突っ張る感じが出にくい
- 刈り上げが必要になることが多い
- 株数が多いと採取に時間がかかる
短髪にする人はこちらを選ぶことが多い。帯状の線が出ないので、刈り上げても目立ちにくいからです。
ただし採る範囲は広がります。点が広い範囲に散るので、極端に短く刈ると点の集まりが見えることがあります。
帯状に切り取る方法
後頭部の皮膚を横長に切り取り、顕微鏡下で1株ずつに切り分けていきます。採った跡は縫い合わせます。
1回でまとまった株数を確保しやすいのが特徴です。採取にかかる時間も短くなる。
| 項目 | くり抜き | 帯状 |
|---|---|---|
| 傷の形 | 点が散る | 線が1本 |
| 縫合 | なし | あり |
| 刈り上げ | 必要なことが多い | 不要なことが多い |
| まとまった株数 | 時間がかかる | 確保しやすい |
髪をある程度伸ばしている人は、線状の傷が髪で隠れるのでこちらでも困りません。逆に刈り上げる予定があるなら不利になります。
器具が全部やってくれるわけではない
装置の名前を前面に出した説明を見かけますが、自動で植え付ける機器を使っても、判断するのは人です。
どの角度で刺すか、どの向きに毛を流すか。ここが仕上がりを決めます。
元の毛は、頭のどこでも同じ向きに生えているわけではありません。生え際は前に倒れ、つむじの周りは渦を描く。この流れに合わせないと、伸びたときに浮きます。
角度と向きで変わること
- 寝かせて植えると前に流れる
- 立てて植えると立ち上がって見える
- 生え際は不揃いに並べるほうが自然
- つむじは渦の向きにそろえる
生え際をきれいな一直線に並べると、かえって人工的に見えます。自然な生え際は、もともとばらついているからです。
この設計は術式では決まりません。どちらを選んでも、ここが甘ければ同じ結果にはなりません。
傷跡の出方が一番の差
選ぶときに一番効くのが、この先どういう髪型にするかです。
帯状の傷は、上から髪が被さっていれば見えません。ただ1センチ未満まで刈ると線が出ることがある。
点状の傷は1つ1つが小さいので、普通の長さなら分かりません。ごく短く刈ると、密度の薄い部分として見えることがあります。
どちらも「絶対に分からない」わけではない。この前提で、自分の髪型と照らして選ぶことになります。
回復にかかる時間
縫合がある分、帯状のほうが最初の数日の負担は大きくなります。後頭部に引っ張られる感じが出ることがある。
| 時期 | くり抜き | 帯状 |
|---|---|---|
| 直後 | 点の赤み | 縫合部の腫れ |
| 1週間 | かさぶたが取れ始める | 抜糸の時期 |
| 2〜3週 | 見た目はほぼ落ち着く | 線が赤い時期 |
| 数か月 | 点が目立たなくなる | 線が白く落ち着く |
どちらも当日から数日は洗い方に制限がつきます。予定の詰まっている時期は避けたほうが無難です。
自分の頭皮でどちらが適するかは、後頭部の状態を見てもらうのが早い。皮膚の伸びやすさによって、選べる術式が絞られることがあります。
当日の流れと痛みの出方
どちらの術式でも、当日は麻酔から始まります。痛みを感じるのは、この麻酔を入れる時だけというのが一般的な説明です。
| 工程 | おおよその時間 | 感じ方 |
|---|---|---|
| 麻酔 | 10〜20分 | 打つときにしみる |
| 採取 | 1〜3時間 | 感覚は鈍い |
| 株の準備 | 並行して進む | 待ち時間 |
| 植え付け | 1〜3時間 | 押される感じ |
合計で半日ほどかかります。途中で食事や休憩をはさむことが多い。
終わったあと、麻酔が切れてから痛みが出ることがあります。鎮痛薬が出るので、我慢せずに飲むほうがいい。
翌日以降は、痛みより「触れない不便さ」のほうが大きくなります。頭を洗えない、掻けない、という状態が数日続く。ここを覚悟しておくと、当日の負担感が変わります。
1回で終わらない前提で採り方を見る
2回目を受ける可能性があるなら、1回目の採り方が効いてきます。
帯状で採った場合、次はその少し上か下を採ることになります。皮膚に伸びる余裕がなければ、2回目が難しくなる。
点状で採った場合は、残っている毛の間からさらに採る形です。採る密度が上がるほど、その範囲全体が薄く見えてきます。
どちらにも「あと何回できるか」の上限があります。1回目の時点で、次を想定した採り方をしてもらえるかは聞いておくところ。
特に若い時期に受けるなら、この先20年分の配分を考える必要が出てきます。1回目で最大量を採るのが得とは限りません。
どちらを選んでも変わらない制約
術式を比べていると、選び方で結果が大きく変わるように見えてきます。実際にはそこまでではありません。
採れる総量は、術式ではなく後頭部の毛の量で決まります。くり抜きにしたから多く採れる、という話ではない。
定着するかどうかも術式そのものより、採ったあと株を傷めずに植えられたかに左右されます。つまり執刀する側の手数の問題です。
それから、どちらの方法でも移した毛は一度抜けます。生えそろうまで時間がかかる点は共通です。ここを術式の差だと誤解しないようにしてください。
あわせて読みたい
- 必要量の数え方は株という単位の中身もどうぞ。
- 術後の時間の流れは植毛後に生えそろうまでの経過もどうぞ。
まとめ
術式の差は後頭部からの採り方だけ。植える工程は共通です。
くり抜きは点の傷、帯状は線の傷。刈り上げるかどうかで有利不利が分かれます。
回復は帯状のほうが最初の数日の負担が大きくなります。
採れる総量と定着の良し悪しは、術式そのものでは決まりません。
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