植毛は、手術が終わった時点で完成ではありません。移した毛はいったん抜けて、それから生え直します。この仕組みを知らないと、術後2か月あたりで「失敗した」と早合点することになります。時間の流れを先に把握しておくのが安全です。
移した毛はいったん抜ける
植えた直後は、短い毛が頭皮に並んだ状態になります。この毛は数週間で抜け落ちます。
抜けるのは毛の部分であって、根の組織は残っています。残った組織が新しい毛を作り直すまでに、数か月かかる。
つまり「抜けた=失敗した」ではありません。この段階で慌てて別の手を打つ必要はない、というのが前提になります。
最初の2週間
植えた場所にかさぶたができます。無理に取ると株ごと外れることがあるので、触らないのが基本です。
この時期に気をつけること
- こすらずに洗う。指の腹で泡を乗せる程度
- うつぶせで寝ない
- 汗をかく運動は避ける
- 帽子は当たり方を確認してから
後頭部の採取跡も、この時期はまだ落ち着いていません。縫合した場合は抜糸が入ります。
腫れが出る人もいます。額のあたりに下りてくることがあり、数日で引くのが一般的です。
最初の3日をどう過ごすか
植えた株が固定されるまでの数日が、一番デリケートな時期です。
| やること | 理由 |
|---|---|
| 頭を心臓より高く保つ | 腫れを軽くする |
| 仰向けで寝る | 植えた場所を圧迫しない |
| 汗をかかない | かゆみと炎症の元になる |
| 処方された薬を飲み切る | 炎症を抑える |
うつぶせや横向きで寝ると、枕に当たった株がずれることがあります。首の下にタオルを入れて角度をつけると、寝返りを打ちにくい。
洗髪は指示された日から始めます。最初は泡を乗せて流すだけ。シャワーを直接当てると、水圧で株が動きます。
この数日を雑にやると、植えた株が定着せずに終わります。取り返しがつかない部分なので、予定を空けておいたほうがいい。
1か月から3か月:見た目が一度後退する
移した毛が抜けて、術前より薄く見える時期があります。さらに、周りの元からあった毛も一時的に抜けることがある。
これはショックロスと呼ばれます。手術による刺激で、周辺の毛が休みの時期に入ってしまう現象です。
多くは数か月で戻ります。ただこの時期が一番心細い。予定を入れづらい期間として、あらかじめ見込んでおくといい。
人前に出る予定がある人は、この3か月をどう過ごすかまで含めて時期を決めることになります。
4か月から6か月:動き出す
細く短い毛が出てきます。最初は産毛のようで、色も薄い。
| 時期 | 見えるもの | 印象 |
|---|---|---|
| 4か月 | 産毛が出始める | まだ数えられる程度 |
| 5か月 | 色がつき始める | 近くで見て分かる |
| 6か月 | 長さが出る | 写真で差が出る |
この段階で伸びてきた毛は、太さも色もこれから変わります。6か月の見た目で最終判断はできません。
髪型で扱えるようになるのは、もう少し先です。
10か月から12か月:判断できる時期
太さと長さがそろってきます。ここでようやく、術前と比べられる状態になる。
一般には12か月前後を評価の目安に置きます。部位によっては18か月まで伸び続けることもあります。
同じ条件で写真を残しておくと、判断がぶれません。光の当たり方で見え方が変わるので、撮る場所と時間を固定しておくのがコツです。
2回目を検討するかどうかも、この時期に決めることになります。早い段階で追加を考えるのは、判断材料が足りていない状態です。
定着しなかったときに何が起きているか
植えた株が全部生えるわけではありません。生えてこなかった分には、いくつか理由があります。
| 原因 | 起きる場面 |
|---|---|
| 株が乾いた | 体の外にある時間が長かった |
| 物理的に外れた | 術後数日に触れた・ぶつけた |
| 血流が届かなかった | 密に植えすぎた場所 |
| 炎症が起きた | 傷口の管理が甘かった |
このうち自分で防げるのは、外れることと炎症です。つまり術後の数日が、結果に直接効いてきます。
残りは施術する側の手数の問題になります。だから定着の見込みをどう説明するかは、選ぶときの判断材料になる。
生えなかった分を無償で追加してもらえるかは、契約の時点で決まっています。終わってから交渉するのは難しい。
周りへの見え方をどう扱うか
術後しばらくは、頭に赤みとかさぶたが出ます。帽子で隠す人が多いのですが、当たり方によっては株に触れる。
つばのあるタイプや、深くかぶらない形のほうが安全です。指示が出ることもあるので確認しておいてください。
職場での見え方が気になるなら、連休に合わせる人が多い。2週間あれば、かさぶたはほぼ落ち着きます。
ただ本当に説明が要るのは、そこではありません。3か月目に一度薄く見える時期です。ここで「失敗したのでは」と周りに言われることがある。
経過として想定内だと本人が理解していれば、そこで揺らぎません。時間の流れを先に知っておく価値は、ここにあります。
1年たったあとにやること
生えそろったら終わり、ではありません。そこからは維持の話に切り替わります。
植えた毛は残りますが、周りの元の毛は進行します。何もしなければ、数年で境目が出てくる。
だから1年の時点で、維持のために何を続けるかを決めることになります。
同時に、2回目をやるかどうかもここで判断できます。この時期なら、どこがどれだけ埋まったかが見えている。
1年目の写真は残しておいてください。そこからの変化が、維持できているかの答えになります。
待てないと満足度が下がる
この治療で一番つらいのは、途中経過が右肩上がりにならないことです。一度下がってから上がる。
そこを知らずに始めると、下がった時点で不信感が出ます。そのまま別の手を重ねて、余計に分からなくなる。
それから、生えそろっても元の密度には戻りません。「薄く見えない」ところまで、というのが現実的な着地点です。ここを最初に握っておかないと、うまくいっていても不満が残ることになります。
元の毛は元の毛で進行します。植えた部分だけ残って周りが薄くなると、境目が目立つ。術後にどう維持するかまで含めて、計画を立てる必要があります。
あわせて読みたい
- 術後の維持については植毛後に治療を続ける理由もどうぞ。
- 採り方の差を知りたいなら植毛の術式の違いもどうぞ。
まとめ
移した毛は数週間で一度抜けます。根の組織は残っています。
1〜3か月は術前より薄く見える時期。周辺の毛が休むこともあります。
4〜6か月で産毛が出て、10〜12か月で判断できる状態になります。
元の密度には戻りません。薄く見えない状態が着地点です。
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