ニットを引っぱり出す時期になると、僕はこの一本を棚の手前に戻します。エセントリック モレキュールズのエセントリック 01 は、つけた本人よりも、その日着ていた服のほうが長く覚えている香水でした。結論から言うと、これは人に気づかせるための一本ではありません。ここでは、香りが三層でどう入れ替わるのか、僕の腕で何時間もつのか、買ってから困ったのはどこか、誰の生活に噛み合うのかまで書いていきます。
この記事でわかること
- 公式が開示している三層が、僕の腕でどう入れ替わっていくか
- 肌の上での体感の持続と、服や寝具に残る匂いのずれ
- 買う前に知っておきたい弱点は2点。売り場で読むべき表記の話も
- 仕事・夜の食事・休日・真夏で、それぞれどう出るか
このブログを書いている人
30代前半メンズ、都内在住。「大手製薬企業 → 大手EC企業 → 大手メーカー企業」と、ライフスタイルに合わせて転職をしながら現在3社目で日々奮闘中。ファッションや美容といった身だしなみのことから、生活を豊かにするガジェット類、インテリアや雑貨まで、実際に使ってよかったものだけを書いています。
私は極度の脂性肌×敏感肌で、スキンケアは市販薬からデパコス、20以上の美容医療やイソトレチノイン治療まで一通り試してきました。
大好きな香水は500本以上、洋服には累計2,000万円ほどを使用(使いすぎ…)
これまで身を削って試してきた実体験を皆様にお伝えします!
結論:エセントリック 01 は「肌に張りつくぶん、布に長く残る一本」
しばらくまわしてみて、まず腑に落ちたのは香りの居場所でした。エセントリック 01 は、肌の表面に香りを置きにいく香水です。半径何メートルに広がるかで測ると、たぶん物足りない評価になります。
そうなる理由は、この香水が何を軸に組まれているかにあります。ベースの中心はイソ E スーパー。公式の説明文にも、肌のすぐ近くを漂って、まとった人のまわりに言葉にしづらい空気をつくる分子だと書かれています。1973年に IFF の研究室でつくられた、自然界には存在しない香料だとも添えられていました。遠くへ飛ばすためというより、肌へ寄せるための素材が真ん中に据えてある、ということです。
はっきり覚えている出来事があります。11月の水曜、グレーのウールのニットを着て一日出歩いて、帰ってから洗わずにハンガーへ戻しておいたんです。次に袖を通したのは土曜の朝でした。首を通した瞬間、水曜の夜と同じ匂いがそのまま立ち上がってきて、玄関で足が止まりました。自分の腕からは水曜のうちに抜けたと思っていた香りが、繊維の側では三日ぶん眠っていたわけです。
肌の上での持続と、布の上での持続は、別物として数えたほうがよさそうです。この一本を語るときの前提は、そこに尽きると思っています。
Ryo
これは香りをまとう買い物というより、自分の体温を買う買い物です。
エセントリック モレキュールズ エセントリック 01 の基本情報
先にお金の話をさせてください。僕が手に入れた100mLは22,500円でした。1mLに直すと225円ほどになります。ひと吹きが0.1mLくらいだとすると、一回あたり20円台。毎日使っても、この容量なら数年は付き合うことになります。
つまり、買うときの負担は重いのに、使うときの負担は軽いという形をしています。棚に置いてある間はずっと高価な瓶ですが、実際に減っていく速度はゆっくりです。僕は買った当日こそ手が震えましたが、二年目に入ったいまは、その額を容量で割った数字のほうが実感に近くなりました。ここが納得できるかどうかで、この一本の評価はかなり変わると思います。
もうひとつ、買う前に知っておいてほしいことがあります。日本の正規代理店は NOSE SHOP です。売り場によっては、商品タイトルに「並行輸入品」と書かれた出品や、テスター品と明記された出品が並んでいることがあります。どれを選ぶかは買う人が決めることですが、表記を読まないままカートへ入れるのだけは避けたほうがいいというのが僕の考えです。瓶の見た目だけでは、どちらなのか判別できません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ブランド | Escentric Molecules(エセントリック モレキュールズ) |
| 商品名 | Escentric 01(エセントリック 01) |
| 型番 | esm-pf-e01 |
| 香調 | トップ:ライム/ピンクペッパー/アルデヒド ミドル:オリス/ヘディオン(グリーンジャスミンの蕾) ベース:イソ E スーパー/インセンス/マスティック/ムスコン(ムスク) |
| 容量 | 30mL/100mL/200mL |
| 剤形 | スプレー |
| 濃度 | 公式に濃度の表記なし(「Fragrance」とだけ書かれています) |
| 成分 | Alcohol Denat., Parfum (fragrance), Aqua (water), Limonene, Linalool, Citral |
| 税込 | 22,500円(100mL) |
| 体感の持続 | 肌の上で5〜6時間 |
香りの変化

三層が開示されているので、どこで何が香っているかを追いやすい香水です。ただ、層と層のあいだが階段のようにはっきり分かれてはいなくて、後半へ行くほど切り替わりがゆるやかになります。僕の腕で起きたことに沿って、順に書いていきます。
トップ
朝、洗面所の鏡の前で手首の内側に一吹きして、そのまま顔を近づけた数分が、この香水でいちばん明るい時間です。まだ肌のひんやりしている腕だと、皮を爪で裂いたときに飛ぶ青くて硬い匂いが鼻の頭に当たり、鼻の奥を軽くつつかれる乾いた刺激もそこに含まれています。うっすら白く光るような、少しだけ人工的な明るさも混ざっていました。名前で言えばライム、ピンクペッパー、アルデヒドの3つ。僕の鼻では硬い柑橘の側が大きく聞こえましたが、これは僕の腕でそう届くというだけの話です。
ここだけを嗅いで判断すると、たぶん印象を取り違えます。僕も最初の一週間は「思っていたのと違うな」と感じていました。この明るさが本体だと思って買うと、10分後には裏切られます。
ミドル
粉っぽさが出てくるのがこの段階です。オリスとヘディオンの2つが並んでいて、乾いた粘土を手のひらでこすったような少しひんやりした粉の香りと、青いジャスミンの蕾を割ったときの、まだ花になりきっていない緑の匂いが、僕の腕では同じ薄さで届きました。古い化粧品の蓋を開けた瞬間の匂いと言い換えても、そう遠くないと思います。
僕の腕だと、家を出て駅に着くころにはもうこのあたりです。距離もこの段階で一気に縮みます。トップの30分は腕を上げれば自然に届いていたのに、ミドルに入ると手首を鼻に寄せるまで分かりませんでした。この落差が、この香水でいちばん誤解されやすいところだと思っています。
ベース
3時間目からが本体です。夕方の電車で吊り革を握って、腕を上げたついでに袖口へ鼻を寄せたときに、いちばんはっきりわかりました。焦げた煙っぽさと樹脂の乾いた匂いが木の質感に溶けたものが上がってきて、全体が体温と見分けのつかない何かになります。ベースの顔ぶれはイソ E スーパー、インセンス、マスティック、ムスコンの4つ。僕の鼻には上下がなく、まとめて肌の匂いのほうへ寄っていきました。
言葉にしづらいのはここです。木の匂いと言えば木の匂いなのですが、どの木かと聞かれると答えられません。香水を嗅いでいるというより、その人の肌が今日はやけに整っている、くらいの受け取り方になります。僕がこの一本を手放せない理由も、結局はこの終わり方です。
そして冒頭に書いたとおり、ここから先が服の側に移っていきます。肌の上では夜に薄くなるのに、脱いだニットやシャツの襟には翌日以降も残っていました。枕カバーでも同じことが起きていて、朝、顔を上げたときに前日の自分の匂いが下から上がってくることがあります。慣れるまではぎょっとしましたが、いまはそれを目当てに寝る前の一吹きを足す日もあるくらいです。
STEP 1|0〜30分
ライム、ピンクペッパー、アルデヒド
青くて硬い柑橘に乾いた刺激が乗る
STEP 2|〜3時間
オリス、ヘディオン
粉っぽさと青いジャスミンの蕾に入れ替わり、距離が縮む
STEP 3|それ以降
イソ E スーパー、インセンス、マスティック、ムスコン
体温と見分けがつかなくなり、布へ移っていく
正直な注意点
いいところだけ並べても仕方がないので、使っていて引っかかった点を2つ書きます。どちらも致命傷ではありませんが、知らずに買うと確実に肩透かしを食らうところです。
ひとつめは、香りが届く距離です。トップの30分を過ぎると、この香水は自分の肌へどんどん寄っていきます。すれ違いざまに気づいてもらう、といった使い方には正面から向いていません。僕は買った直後、人に反応してもらえないのが不安で量を増やしたことがあるのですが、増やしても届く距離はたいして伸びませんでした。伸びたのは自分の鼻の疲れだけです。量で解決しようとしないほうがいい香りだと、そこで学びました。
ふたつめは、入口の重さです。100mLで22,500円という額は、試してみたいという動機で払える金額ではありません。しかも香りの本体が出てくるのは3時間目からなので、店頭で手首に一吹きして5分で判断すると、肝心なところを見ないまま帰ることになります。容量は30mLからあるので、いきなり大きい瓶に手を伸ばさず、小さいほうで一日連れて歩いてから決めるほうが安全です。
もう一段だけ付け加えると、香りの幅は広くありません。明るい出だしから粉を経て、木と樹脂と煙に落ちていきます。その一本道を毎日たどる香水なので、日によって表情を変えたい人には物足りないはずです。僕はそこを弱点と割り切って、平日の制服のような使い方に寄せています。
注意
① 香りが届く距離が短い。トップの30分を過ぎると肌へ寄っていくので、量を足しても遠くまでは伸びない
② 判断に時間がかかるのに入口が重い。本体はベースに下りてからなので、店頭の数分では良さが出ないまま額だけが先に来る
合う人・合わない人
向き不向きは、わりとはっきり割れます。香りで名乗りたい人には向かず、香りで整えたい人には刺さるというのが僕の結論です。
まず、職場の席が近い人。ミドル以降は肌に寄っていくので、隣に座っている人へ圧をかけません。次に、服を大事に着回す人。ニットやジャケットのように毎回は洗わないものを着ている人ほど、この香水の残り香を受け取れます。三日前に着たコートから自分の匂いが出てくるのを、いい気分だと思えるかどうかがひとつの分かれ目です。
逆に、香りをはっきり褒められたい人には向きません。人に届く距離が短いので、リアクションを期待していると空振りが続きます。柑橘やバニラのように名前で言い当てられる香りが好きな人にも、たぶん物足りない一本です。何の香りかと聞かれて、僕はいまだにうまく答えられていません。
こんな人に合う
- ✓ 席が近い職場で、香りの圧を出したくない人
- ✓ ニットやコートを洗わずに着回す人。残り香を楽しめる
合わないかも
- × 香りをはっきり褒められたい人。届く距離が短いので反応が返りにくい
使う場所と時間

いちばんはまるのは、10月から11月にかけての、まだコートを出す前の時期です。ウールのニット一枚で出かける朝に、家を出る15分前、胸元ではなく背中側の肩甲骨のあたりへ一吹きします。そこだと自分の鼻に近すぎず、上着を脱いだときに座席の背もたれ側へ抜けていきます。
平日なら、打ち合わせが続く日に使うことが多いです。朝つけて、昼には自分でも分かりにくくなっているくらいがちょうどよくて、会議室で向かいに座られても邪魔になりません。夜に食事へ出る日も使いますが、そのときは控えめに使うほうが上手くいきます。席についたころにはもうベースなので、近づいたときに整っている、くらいの役回りです。
休日は、平日より少し多めに吹きます。土曜の昼に本屋や美術館へ行くような、静かな場所を長く歩く日です。人と密着しないぶん量を足しても迷惑になりませんし、コートを着ていれば夕方まで襟のあたりに残ります。真夏だけは相性が落ちました。汗と混ざるとインセンスの煙っぽさが前に出すぎて、自分でも重いと感じる日があります。
使う場面
| 仕事・オフィス | ◎ | 昼には肌へ寄るので、席が近くても圧が出ない |
| 夜デート | ○ | 着いたころにはベース。近づいたときに整っている役回り |
| 休日 | ◎ | 静かな場所を歩く日に合う。コートの襟に夕方まで残る |
| 真夏 | △ | 汗と混ざると煙っぽさが前に出て重くなる |
保管で中身は変わる
デスクライトの真下に、一週間ほど置きっぱなしにしていたことがあります。夜に手元を照らすためだけの明かりですから、日光とは関係のない場所のつもりでした。ところが一週間後に瓶を握ったら人肌くらいにぬるくなっていて、そこで初めて慌てて引き出しへ移しました。光と熱がかかるのは、窓際だけではないんですね。
この一本でそこを気にするのには理由があります。成分の表記は Alcohol Denat., Parfum (fragrance), Aqua (water), Limonene, Linalool, Citral という短いもので、後ろの三つは光や熱で表情が変わりやすい香料成分です。出だしのライムの伸びには、置き方の差がそのまま出ます。
引き出しへ移してからは、机の上に戻していません。手間はかかりませんし、買って一年以上たったいまも、出だしのライムはちゃんと立ってくれます。逆に言えば、置き場所を軽く見ると、真っ先に分かる部分から鈍っていくということでしょう。
そして、この香水固有の事情がひとつあります。100mLという量は、一日ひと吹きの使い方だと何年も残るということです。使い切るまでの期間が長いぶん、保管の良し悪しが積み上がる時間も長くなります。買った瞬間の香りを最後まで引っぱりたいなら、置き場所を決めるのは最初の日にやっておいたほうがいいです。
置き場所と影響
| 直射日光の当たる窓際 | × | 光でトップの柑橘の伸びが変わる |
| 浴室・洗面所 | × | 湿気と温度差がかかり続ける |
| 暖房の近く | × | 熱で中身が傷む |
| 100mLを数年かけて使う | × | 使い切るまでが長いぶん、置き場所の差が積み上がる |
口コミの読み方
「それ、何もつけてないでしょ」と言われたことがあります。しっかり吹いた日の夕方、隣に座った同僚からでした。褒め言葉なのか指摘なのか分からなくて、その日は帰るまでずっと考えていたのを覚えています。
100mLの額の前で、僕の手はずいぶん長く止まりました。香水を試す感覚で出せる金額ではありません。二年たったいまの答えを書くと、買った日の額と一回あたりの額は、この一本ではかなり離れた数字になります。一日ひと吹きだと瓶の減る速度がとにかく遅いので、使った量で割り直すと数字の顔つきが変わりました。いきなり大きい瓶へ手を出すのが怖いなら、30mLという入口もあります。
人に届かないのではないか。これも買う前から抱えていた不安です。届く距離という意味では、その不安は当たっていました。ただ二年つけて分かったのは、弱いのではなく近いだけだということです。肌に鼻を寄せればちゃんと濃い。人に届かないことと、香りが薄いことは別の話でした。この二つを混ぜたまま買うかどうかを決めると、判断を間違えます。
地味に過ぎるのではないか、という迷いも最後まで残っていました。これは否定しません。むしろ、地味に見えることがこの香水の狙いなのだろうと、いまは受け取っています。何の香りか言い当てられない状態をつくるために組んであるわけですから、名指しできる派手さが欲しい日は、別の一本を使えばいいだけです。
買う前に迷った点
| 100mLの額を出せるか | 買う日の額と一回あたりの額が離れます。30mLという入口もあります | |
| 人に届かないのではないか | 弱いというより近いだけで、肌に鼻を寄せれば濃さはあります | |
| 地味に過ぎないか | 言い当てられない状態をつくる設計なので、派手さは狙いの外にあります |
まとめ
エセントリック 01 は、僕にとって平日の制服みたいな一本になりました。明るいライムで始まって、粉を通って、木と樹脂と煙に落ちる。その一本道を毎朝たどるだけなのに、二年経っても飽きていません。そして肌から抜けたあとに、ニットや枕カバーの側で待っている。この二段構えが、いまのところ手持ちのどの使い方とも噛み合っています。
一方で、人に届く距離は短く、入口の額も軽くありません。香りで名乗りたい人や、日替わりで表情を変えたい人には勧めにくい香水です。買うなら、まず30mLで一日連れて歩いて、脱いだ服の匂いまで確かめてから大きい瓶へ。この順番が、僕自身がたどればよかったと思っている道筋です。
この記事のまとめ
- ✓ 出だしの明るさは30分ほど。本体は3時間目から下りてくるベース
- ✓ 肌の上は体感5〜6時間。ニットや枕カバーには翌日以降も残る
- ✓ 届く距離は短い。量を足しても伸びないので、寄せる使い方に振り切る
いま手に入るかどうかは、売り場をのぞいてみるのが早いです。下のリンクはブランド名での検索につながっているので、エセントリック 01 の扱いをそこから確かめてみてください。
※本記事はプロモーションを含みます

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