電気代を下げたいとき、何から手をつけるかで結果が10倍変わります。資源エネルギー庁が公開している実測ベースの試算を金額に直して並べると、いちばん効く行動が年5,770円、いちばん効かない行動が年170円。同じ「節電」でも桁が違いました。この記事では、家電のワット数を月額に直す計算式を1本だけ示したうえで、その計算がなぜ定格の数字だけでは外れるのか、どこを測れば順番を間違えずに済むのかを書きます。
覚える式は1本だけ
家電1台の電気代は、次の掛け算で出ます。
消費電力(W)÷ 1000 × 使う時間(h)× 日数 × 単価(円/kWh)。
1000で割るのは、W(ワット)を kW(キロワット)に直すため。電気は kWh、つまり「1kWの機器を1時間動かした量」で売られています。
例として、500Wの電気こたつを1日5時間、ひと月30日使う場合。500 ÷ 1000 × 5 × 30 = 75kWh。単価を31円とすれば2,325円。ひと月2,325円という数字が出れば、買い替えるのか、設定を1段下げるのか、別の暖房にするのかを比べられるようになります。
式そのものは中学の算数で、覚えるのはここまで。難しいのは、この式に入れる「消費電力」と「単価」をどこから持ってくるか、のほうです。
31円/kWh は目安であって、あなたの請求書の数字ではない
単価から片づけます。家電の省エネ性能をうたう表示で使われている数字は31円/kWh(税込)で、家電公正取引協議会が定めた目安単価です。同協議会は「現在の目安単価は、令和4年7月22日に改定された31円/kWh(税込)です」と説明しています。資源エネルギー庁の省エネポータルサイトも、金額換算の係数として同じ31円を使っている。
ただしこれは、比較のための共通のものさしです。実際の単価は電力会社と契約プランと使用量で変わり、燃料費調整額や賦課金も乗る。地域によっても違うので、31円ちょうどの人はむしろ少ないはずです。
自分の単価の出し方
- 検針票か契約サイトで、その月の請求額(税込)とその月の使用量(kWh)を見る
- 請求額 ÷ 使用量 で割る。出た数字が、あなたの家のその月の単価
- 夏と冬で使用量が大きく違う家は、季節ごとに2回出しておくと精度が上がる
この記事では以降、比較しやすさのために31円で統一します。自分の単価が28円なら書いてある金額を0.9倍、35円なら1.13倍してください。順番は単価が変わっても入れ替わりません。金額の絶対値だけがずれます。
定格Wと実測Wはここまで違う|測らないと順番を間違える
次に消費電力です。カタログに載っている「定格消費電力」をそのまま式に入れると、多くの機器で大きく外れます。
パナソニックの6畳用エアコン CS-J224D を例にとります。仕様表の冷房の欄は「消費電力 635(135〜720)W」。括弧の中が実際に動く範囲で、下は135W、上は720W。5倍以上の幅があります。暖房はさらに広く、470(125〜1,280)W で10倍。
この機種の期間消費電力量は、冷房225kWh・暖房492kWh・合計717kWh と公表されています。仮に定格の635Wを鵜呑みにして、資源エネルギー庁の試算が使う「1日9時間」で冷房期間112日ぶんを計算すると、0.635 × 9 × 112 = 約640kWh。実際の公表値は225kWhですから、定格で計算すると2.8倍に膨らむ。金額では約19,800円と約6,980円の差です。
冷蔵庫はもっと極端
シャープの152Lの機種 SJ-TD15R は、定格消費電力が電動機52W・電熱装置110W、年間消費電力量が260kWh。260,000Wh を1年の8,760時間で割ると、平均は約29.7W。電動機の定格52Wの6割弱しか使っていない計算になります。圧縮機は動きっぱなしではなく、庫内が冷えれば止まるからです。
つまり、年間消費電力量が公表されている機器(冷蔵庫・エアコン・テレビ・洗濯機など)はその値を使えばよく、公表されていない機器は自分で測るしかない。ここで測定器が必要になります。
待機電力より、1日3時間の中出力が効いている
節電の話でまず出てくるのが待機電力です。使っていないのに減っている、というのは確かに気持ちが悪い。けれど金額に直すと、優先順位はかなり下がります。
0.5Wの機器を10台つなぎっぱなしにしていると仮定します。合計5W。5 ÷ 1000 × 24 × 365 = 43.8kWh。31円で約1,360円、月にして113円です。しかもこれは10台ぶんを丸ごと断ち切った場合の話で、現実には録画機や給湯器のように切れないものが混ざる。
対して、資源エネルギー庁が示している電気カーペットの試算はこうです。3畳用の設定温度を「強」から「中」に下げる(1日5時間使用)だけで、年間185.97kWh、約5,770円。待機電力を全部潰した場合の4倍以上が、つまみを1段回すだけで動きます。
この185.97kWh を暖房期間169日・1日5時間、つまり845時間で割ると、「強」と「中」の差は約220W。1日数時間しか使わない中出力の機器が、家計にはいちばん効いているということです。
同じやり方で他の機器も1時間あたりに直すと、輪郭がはっきりします。資源エネルギー庁の「1日1時間短縮」の試算から逆算した値です。
| 機器 | 年間の削減量 | 1時間あたりに直すと |
|---|---|---|
| デスクトップ型のパソコン | 31.57kWh | 約87W |
| ノート型のパソコン | 5.48kWh | 約15W |
| テレビ(50V型・液晶) | 28.87kWh | 約79W |
| エアコン 暖房(169日で計算) | 40.73kWh | 約241W |
| エアコン 冷房(112日で計算) | 18.78kWh | 約168W |
デスクトップとノートで約5.8倍。在宅の作業を1日3時間ノートに移すだけで、待機電力を全部断つより大きい差が出る計算になります。
実測値で並べた「効く順」
資源エネルギー庁が省エネポータルサイトで公開している省エネ効果を、金額の大きい順に並べます。同サイトの数字は省エネルギーセンターの実測値がもとで、金額は31円/kWh換算です。
| やること | 年間の削減量 | 金額 |
|---|---|---|
| 電気カーペット(3畳用)を「強」から「中」に(1日5時間) | 185.97kWh | 約5,770円 |
| 電気ポットの6時間保温をやめ、都度再沸騰させる | 107.45kWh | 約3,330円 |
| 電気カーペットを3畳用から2畳用に(部屋に合わせる) | 89.91kWh | 約2,790円 |
| 冷蔵庫の設定を「強」から「中」に | 61.72kWh | 約1,910円 |
| 電気こたつを「強」から「中」に(1日5時間) | 48.95kWh | 約1,520円 |
| 冷蔵庫を壁から離して置く(上と両側→片側のみ接触) | 45.08kWh | 約1,400円 |
| 冷蔵庫に詰め込みすぎない(満杯→半分) | 43.84kWh | 約1,360円 |
| エアコンの暖房を1日1時間短縮 | 40.73kWh | 約1,260円 |
| エアコンのフィルターを月1〜2回清掃 | 31.95kWh | 約990円 |
| デスクトップ型のパソコンを1日1時間短縮 | 31.57kWh | 約980円 |
| テレビを見る時間を1日1時間減らす | 28.87kWh | 約895円 |
| ノート型のパソコンを1日1時間短縮 | 5.48kWh | 約170円 |
上から4つ、つまり床まわりの暖房と保温と冷蔵庫の設定で年13,800円ぶん。下のほうを全部足しても、いちばん上の1行に届きません。
目を引くのは、冷蔵庫の項目が3つ入っていること。しかもそのうち1つは「壁から離す」で、これは設置の話です。買い替えなくても、押し込んでいた冷蔵庫を数センチ手前に出すだけで年1,400円動く。
測る道具は2種類|差し込むだけと、記録が残るもの
年間消費電力量が公表されていない機器を測るには、コンセントとの間にはさむ計測器を使います。大きく2つ。
画面で読むタイプ
サンワサプライのワットモニター TAP-TST8N は、消費電力(W)に加えて積算電力量(kWh)・積算時間・積算電力料金(円)・二酸化炭素の排出量を表示します。測定範囲は0.3〜1650Wで、精度は最大2%±5W。定格容量は15A・100V。本体は W60×D40×H59mm・約72gと、コンセント1口ぶんの大きさです。
この手の道具の利点は、積算電力料金が直接読めること。割り算をしなくても「先週から今日までで何円」が画面に出るので、測りたい機器を1台ずつつなぎ替えていく使い方に向いています。
記録が残るタイプ
もう1つがスマートプラグです。SwitchBot プラグミニ(W2001400)は最大負荷1500Wで、消費電力の統計をアプリ側に残せます。本体は70×39×59mm・約70g。通信は Bluetooth と無線の両方に対応しています。
こちらの強みは、張り付いていなくても差が見えることです。断続運転する機器や、使う時間がばらつく機器は、その場で画面を見ても意味のある数字が出ません。1週間ぶんの記録を取って初めて平均が出る。計算式に入れるべき「実測W」は、まさにこの平均のことです。
測る道具の物足りないところ
推しておいて何ですが、この2つには測れないものがあります。先に書いておきます。
まず、コンセントから電源をとっていない機器は測れません。エアコンの多くは専用回路に直結されていて、途中に計測器をはさむ余地がない。電気温水器や200V機器も同じです。表でエアコンが上位にいることを考えると、いちばん効く相手の一部が最初から測定の外にある、ということになります。この帯はメーカーが公表している期間消費電力量で代用するしかない。
次に、容量の上限。TAP-TST8N の定格容量は15A・100V、プラグミニの最大負荷は1500Wです。電子レンジは定格消費電力が1,400Wを超える機種があり、そもそも計測器を挟んではいけない相手。取扱説明書の許容範囲を先に読んでください。
精度も見ておきます。TAP-TST8N は最大2%±5W。10Wの待機電力を測ろうとすると±5Wの誤差が乗って半分ずれる可能性がある。この道具は小さい数字を測るのに向いていません。待機電力の犯人探しに使うと、答えが出ないまま時間だけ溶けます。
そして最大の限界は、測っただけでは1円も下がらないこと。設定を1段下げる、使う時間を削る、置き場所を変える、買い替える。測るのは順番を決めるための作業であって、節電そのものではありません。
測ったあとにやることを先に決めておく
順番を間違えないために、測る前に決めておくと迷いが減ります。
測定を無駄にしないための3つ
- 測る対象を、年間消費電力量が公表されていない機器に絞る。冷蔵庫とエアコンは仕様表を見れば済む
- 1台につき最低1週間、同じ生活のまま記録する。1日だけの数字は季節と天気で動く
- 出た金額が年3,000円を超えた機器だけ手を打つ。それ以下は測っただけで終わらせる
3つめが実は大事です。全部を最適化しようとすると続きません。資源エネルギー庁の表で年3,000円を超えていたのは電気カーペットと電気ポットの2つだけ。家に効く相手はそんなに多くない。
買い替えを検討する段になったら、比べるのは本体価格ではなく年間消費電力量です。シャープの冷蔵庫でいえば152Lの機種が260kWh、179Lの機種が270kWh。31円換算で年8,060円と8,370円、10年で3,100円しか変わりません。この差なら容量で選んでいい、という判断がここで初めてできます。
まとめ
電気代の計算は、消費電力(W)÷ 1000 × 使う時間 × 日数 × 単価、の1本で足ります。難しいのは式ではなく、そこに入れる数字を定格から持ってくると外れることのほうでした。エアコンの定格635Wは実際には135〜720Wの間で動き、冷蔵庫の平均は定格の6割弱です。
順番も、思っているのとは違いました。待機電力を10台ぶん断ち切って年1,360円、電気カーペットのつまみを1段下げて年5,770円。効くのは、使う時間が短くても出力が中くらいの機器のほうです。
単価は地域と契約で違うので、請求額 ÷ 使用量 で自分の数字を一度出しておいてください。この記事の金額は目安単価の31円で統一していますが、単価が変われば金額は動きます。動かないのは順番のほうで、そこだけ持ち帰ってもらえれば十分です。
こたつとホットカーペットの電気代比較についても書いています。
※本記事はプロモーションを含みます

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