オーブントースターの売り場は、8,000円から39,000円まで同じ棚に並んでいます。ヒーターの本数を数えても、消費電力を見比べても、5倍近い価格差の理由は出てきません。差が出ているのは熱の作り方ではなく、その熱をいつ切るかの判断のほうでした。この記事では、アラジン・バルミューダ・シロカ・パナソニックが自社の仕様表と取扱説明書に書いている内容だけを並べて、どこから上が「焼き色が毎回そろう機械」なのかを見ていきます。
同じ設定なのに、2枚目の焼き色が変わる
安いトースターで食パンを続けて焼くと、1枚目と2枚目で色が違う。つまみの位置は動かしていないのに、2枚目のほうが濃く出たり、逆に生っぽく上がったりします。
これは壊れているわけではありません。アイリスオーヤマの2枚焼きオーブントースターの取扱説明書には、サーモスタットによってヒーターが点灯したり消灯したりしながら調理温度を調節していると書かれています。同じ説明書には「続けて調理すると庫内が高温になっているため、サーモスタットが働いてヒーターが点灯しないことがある」という項目もあり、焼きむらについての説明まで用意されている。メーカー自身が、そういう挙動の機械だと明記しているわけです。
つまり2枚目の焼き色が変わるのは、機械の設計どおりの結果。ここを直したいなら、上位機で何が変わるのかを先に見たほうが早い。
同じブランドの中で、価格差の正体が丸見えになっている
いちばん分かりやすいのがアラジンです。同社は2枚焼き・4枚焼き・フラッグシップの3機種を公式サイトの同じ比較表に並べていて、熱源はどれも同じグラファイトヒータ。それでも公式直販の価格は14,300円から39,000円まで開きます。
| グラファイトトースター(2枚焼き) | グリル&トースター(4枚焼き) | フラッグシップモデル | |
|---|---|---|---|
| 型番 | AET-GS13D | AGT-G13B | AET-GP14B |
| 公式直販価格(税込) | 14,300円 | 22,000円 | 39,000円 |
| 消費電力 | 1270W | 1390W | 1430W |
| 温度調節の範囲 | 100〜280℃ | 100〜280℃ | 40〜320℃ |
| マイコン制御 | なし | なし | あり |
| 過昇防止サーモスタット | 印なし | あり | あり |
| 焼ける枚数 | 2枚 | 4枚 | 4枚 |
| 質量 | 約3.4kg | 約4.7kg | 約7.1kg |
熱源が共通で、温度の目盛りもほぼ同じ。にもかかわらず値段が2.7倍まで開く理由として公式の表がはっきり印を分けているのが、マイコン制御の行です。○が付いているのはいちばん高い1台だけ。
そのマイコン制御の中身として、アラジンは「焼き時間を自動調整」「選べる5段階の焼き色」、そして連続で何回焼いても同じ焼き色と説明しています。冒頭の2枚目問題を、メーカーが上位機の売り文句として名指ししている形。3万円台で買っているのは、ヒーターではなく判断のほうだと考えると腑に落ちます。
安い機種は温度を測っていない|目盛りの形を見れば分かる
1万円を切るクラスに何が足りないのかは、仕様表の温度の欄に出ています。
アイリスオーヤマの2枚焼きは、温度調節つまみが80〜230℃で無段階切り換え。段階が刻まれていないので、前回と同じ位置に戻すことができません。タイマーはぜんまい式で、公式が誤差の発生を認めている。同じ設定を再現する手がかりが、そもそも本体に用意されていない構造です。
ツインバードのミラーガラスオーブントースターに至っては、温度の表示自体がありません。公式ストアに載っているのは300/600/900/1200Wの4段階という火力切替で、これは温度ではなく電力の話。同社の別モデルも860/650/430/220Wの4段階でした。7,980円という価格を思えば妥当な割り切りだと思います。
「温度を指定する」と「温度を測る」は別
ここで混同しやすいのが、温度の目盛りがあれば温度制御をしていると思ってしまうこと。目盛りは狙いを入力する場所であって、庫内が今何℃かを機械が把握しているかどうかは別の話です。
たとえばシロカのすばやきトースターは40〜280℃を20℃刻みの13段階で指定できますが、取扱説明書でセンサーの役割として書かれているのは庫内の過熱を防ぐためという表現で、挙動もヒーターの入切です。そのかわりコンベクションファンで熱風を回して庫内の温度差そのものを減らす、という別の解き方をしている。同じ「温度が出る機械」でも、狙いの付け方は横並びではありません。
熱源の速さは、各社が数字で出している
制御の話が本筋とはいえ、熱源の性格も焼き上がりに出ます。ここは公表値がある部分。
| メーカー | 熱源の呼び方 | 公表されている数字 |
|---|---|---|
| アラジン | グラファイトヒータ | 発熱するまで0.2秒 |
| シロカ | カーボンヒーター+熱風循環 | 立ち上がり2秒/6枚切り1枚を90秒 |
| パナソニック | 遠近トリプルヒーター(上に遠赤外線と近赤外線、下に遠赤外線) | 立ち上がりの秒数は公表なし |
| バルミューダ | 上下のヒーター管(材質・本数は非公表) | 立ち上がりの秒数は公表なし |
アラジンの0.2秒は公式の3ページすべてに同じ文言で載っていて、グラファイトヒータが株式会社千石の登録商標だという注記まで添えられています。シロカの90秒は6枚切り1枚を焼き色ふつうで焼いた場合の値。速く立ち上がる熱源は、パンの中の水分が逃げる前に表面を固められるというのが各社共通の言い分です。
パナソニックの遠近トリプルヒーターは、上に遠赤外線と近赤外線、下に遠赤外線という3系統の構成。同社は遠赤外線が表面をこんがり焼き、近赤外線が食材の中へ浸透すると説明しています。こちらの温度調節は120〜260℃で、製品ページの表現では8段階。マイコン温度コントロールの欄にも○が付いている。
注意しておきたいのは、ヒーターの本数はどのメーカーも公表していないことです。図で上下1本ずつと読み取れるものはありますが、「4本ヒーターだから高性能」といった数え方は、少なくともメーカーの資料からは裏づけが取れません。
バルミューダが売っているのは、水5ccの使い方
3万円台の代表格であるバルミューダ ザ・トースターは、他社と土俵が少し違います。公式ストアで33,000円、消費電力は1300W。特徴は付属の給水カップで庫内に水を入れる方式で、取扱説明書には調理時間1〜2.5分なら3cc、3分以上なら5ccと書き分けられています。
同社が技術ページで述べているのは、庫内温度を常に計測して均一にコントロールすること、そして1秒単位の温度制御。狙う温度帯として60℃前後・160℃前後・220℃前後という3つの数字を挙げています。水分でパンの表面を覆ってから、その3段の温度を通していく、という組み立て。
| バルミューダ ザ・トースター K11A | 同 プロ K11A-SE | |
|---|---|---|
| 公式価格(税込) | 33,000円 | 38,500円 |
| 消費電力 | 1300W | 1300W |
| 温度を指定できるモード | クラシックモードの170/200/230℃ | 同じ3段階+サラマンダー |
| 給水量 | 3ccまたは5cc | 3ccまたは5cc |
| 外形寸法 | 357×321×209mm | 357×324×209mm |
| 質量 | 約4.1kg | 約4.1kg |
プロのほうは上のヒーター管だけを点灯させるサラマンダーが加わり、公式はクラシックモード230℃と同じ時間で比べて1.4倍の熱エネルギーと説明しています。庫内の奥行きが2cm広がり、焼きアミの形も変わっている。差額は5,500円です。
置き場所は値段と比例しない
焼き上がりの話から離れますが、買ったあとに効いてくるのが本体の大きさです。高い機種ほど大きい、という単純な並びにはなっていません。
| 機種 | 外形寸法(幅×奥行×高さ) | 質量 | 枚数 |
|---|---|---|---|
| バルミューダ ザ・トースター | 357×321×209mm | 約4.1kg | 公表なし |
| アラジン 2枚焼き | 350×295×235mm | 約3.4kg | 2枚 |
| アラジン 4枚焼き | 360×355×250mm | 約4.7kg | 4枚 |
| アラジン フラッグシップ | 391×391×276mm | 約7.1kg | 4枚 |
| パナソニック ビストロ NT-D700 | 341×328×269mm | 約4.3kg | 2枚 |
| シロカ すばやきトースター | 350×320×230mm | 約4.8kg | 2枚 |
33,000円のバルミューダが幅357mmで約4.1kg、14,300円のアラジン2枚焼きが幅350mmで約3.4kg。ほぼ同じ場所に置けます。いっぽうでアラジンのフラッグシップだけは約7.1kgあり、奥行きも391mm。2枚焼きと比べて奥行きで約10cm、質量で倍以上の差です。
枚数も補足を。バルミューダは焼ける枚数を公表しておらず、取扱説明書にあるのは「1枚の場合/2枚以上の場合」という書き分けだけでした。人数から選びたいなら、枚数を明示している他社のほうが判断しやすい。
気持ちよく勧められないところ
ここまで上位機を持ち上げる形になったので、引っかかる点を並べておきます。
まず、ヒーターの入切そのものは価格帯を問わず共通だということ。バルミューダも取扱説明書の問い合わせが多い項目として、ヒーターをつけたり消したりして温度を調整していると答えています。違うのは切る判断の根拠と細かさであって、常に一定の熱が出ている機械はこの中に1台もありません。
次に、温度を自由に指定できるとは限らない点。バルミューダで数字を選べるのはクラシックモードだけで、トーストやクロワッサンといった他のモードは温度指定ではなくプログラムです。230℃でクロワッサンを焼く、という組み合わせは選べない。細かく自分で詰めたい人には窮屈に感じるはずです。
アラジンにも書いておくことがあります。公式の比較表で過昇防止サーモスタットに印が付いているのは4枚焼きとフラッグシップの2機種で、いちばん安い2枚焼きの欄は空いたまま。同じブランドでも安全側の装備がそろっているわけではない、と読めます。
パナソニックのビストロにはスチーム機能がありません。そして仕様表に「センサー」という語は一度も出てこない。書かれているのはマイコン温度コントロールの○と、パンの厚みや庫内温度に応じた7200通りのプログラムという説明です。センサーが何個入っているかで機種を比べるのは、そもそも公表されていないので無理があります。
最後に価格。パナソニックの製品ページには希望小売価格の行そのものが無く、シロカも発表時のプレスリリースにある「市場想定価格20,000円前後」という書き方でした。この2社は実売を自分で確かめる必要があります。
予算ごとに、何を諦めることになるか
以上を踏まえて、価格帯ごとに手に入るものと手に入らないものを整理します。
| 予算 | 手に入るもの | 諦めることになるもの |
|---|---|---|
| 8,000円前後 | パンが焼ける。火力の切替が数段階 | 温度の指定と、焼き色の再現性 |
| 14,000〜20,000円 | 立ち上がりの速い熱源、100〜280℃の温度指定 | 連続で焼いたときの焼き色のそろい |
| 20,000円前後 | 20℃刻みの温度指定、熱風循環、90秒という速さ | スチーム。温度制御は過熱防止が主目的 |
| 33,000円前後 | スチームと1秒単位の温度制御、3段の温度帯 | 温度を自由に決める自由度。枚数の表示 |
| 39,000円 | マイコン制御による焼き色の再現、40〜320℃ | 置き場所。約7.1kgで奥行き391mm |
面白いのは、いちばん高い1台といちばん安い1台のあいだに、単純な上下関係が成立していないこと。スチームが要るならバルミューダ、焼き色をそろえたいならアラジンのフラッグシップ、速さと温度の刻みが欲しいならシロカ、というふうに3万円台の中でも向いている用途が割れます。
買う前に確かめる3点
- 続けて2枚焼くかどうか。朝に2人ぶん焼く家なら、焼き色の再現性に効く機能があるかを先に見る
- 置き場所の奥行き。扉を開いた状態で手前にどれだけ出るかは仕様表の外形寸法に含まれないので、実測で余裕をみる
- 温度指定が全モードで使えるか。モード固定の機種は、狙った温度で他の食材を焼くという使い方ができない
予算2万円前後で速さを取りに行くなら、シロカのすばやきトースターは分かりやすい選択肢。40〜280℃を20℃刻みで指定でき、ヒーターは上下・上のみ・下のみで切り替えられます。タイマーが5秒から90分まであるので、トースターというより小さなオーブンに近い。
並べて読むなら、家電のワット数を月額に直す計算を参照してください。
まとめ
トースターの価格差を作っているのは、ヒーターの本数でも消費電力でもない。1270Wと1430Wという近い数字の機械が、公式直販で14,300円と39,000円に分かれています。その表で印が割れていたのはマイコン制御の行だけです。
1万円を切るクラスは、温度つまみが無段階だったり、そもそも温度表示がなく電力の切替だったりする。サーモスタットが庫内の熱さで入切している以上、2枚目の焼き色が変わるのは仕様どおりの結果で、これはメーカーの取扱説明書にそう書かれています。
この記事の数字はアラジン・バルミューダ・シロカ・パナソニック・アイリスオーヤマ・ツインバードの公式仕様表と取扱説明書から引いたものだけで、僕の体感は混ぜていません。ヒーターの本数と温度センサーの個数は、どのメーカーも公表していませんでした。価格は改定されるので、買う直前にメーカーの該当ページを開き直しておくと確実です。
※本記事はプロモーションを含みます

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