テレビのセリフが聞き取れないとき、たいていは音量ではなく音の出ている場所に原因があります。各社の仕様表を並べたら、標準的なテレビの音声出力は20Wで、スピーカーは2個だけでした。この記事では、テレビとサウンドバーの公式仕様に載っている数字だけを使って、2万円台と3万円台で何が変わるのか、どこまでが本体の性能でどこからが接続の話なのかを切り分けます。聴いた感想は入れていません。寸法と出力と対応形式の話です。
薄型テレビのスピーカーは画面の下にある|音の中心が下へずれる
テレビの音が遠く感じる理由を、メーカー自身が書いています。ソニーは上位モデルの説明ページで、ふつうのテレビは画面の下部にスピーカーを積んでいるため、画面が大きくなるほど音の中心が下へずれていくと説明している。そのうえで同社の上位機は、画面の上部にもトゥイーターを置いて位置を引き上げる構成を採っています。
同じ手当ては他社にもあります。パナソニックの上位機は背面の上部にスピーカーを積み、天井へ音を反射させる方式。レグザの上位機は仕様表に「フルレンジ2個、ツィーター2個、トップツィーター2個、ウーファー1個」と、合計7個のスピーカーを並べています。
つまり各社とも、上位機では音の出る場所を上へ持ち上げにいっている。裏を返せば、価格帯が下がったテレビでは手当てされていないということでもある。
出力の数字を並べると差がはっきりする
テレビの仕様表には音声実用最大出力という項目があります。同じメーカーの中でも桁が違う。
| 機種 | スピーカー構成 | 音声実用最大出力 |
|---|---|---|
| ソニー X75WL | フルレンジ×2 | 20W(10+10) |
| ソニー XR50(ブラビア 5) | フルレンジ×2、トゥイーター×2 | 40W(10+10+10+10) |
| レグザ Z870N | フルレンジ2、ツィーター2、トップツィーター2、ウーファー1の計7個 | 60W(メイン15+15、トップツィーター5+5、ウーファー20) |
| パナソニック Z90A | 背面上部にスピーカーを追加 | 80W |
標準的なモデルは20W・スピーカー2個です。この20Wというのは、あとで出てくるサウンドバーのいちばん安い機種の6分の1にあたる数字。音量を上げても聞き取りやすくならないのは、足りていないのが音量ではなく、セリフを受け持つスピーカーの数と向きだからです。
「2.0」「2.1」「3.1」は何を数えているか
売り場でまず目に入るのがこの表記です。読み方は単純で、小数点の前が普通のスピーカーの数、後ろが低音専用のスピーカーの数。
2.0なら左右の2本だけ。2.1は左右に低音用が1つ足された構成。3.1になると左右に加えて中央にもう1本入り、この中央がセリフを受け持ちます。セリフの聞き取りだけが目的なら、効くのは小数点の前の数字のほうです。
ただし表記の付け方はメーカーによってばらつきがある。ヤマハは仕様表にチャンネル数の行を持たず、スピーカーユニットの口径と本数で書いています。ソニーは「2.1ch(ワイヤレスサブウーファー)」のように括弧つきで書く。数字だけを横並びにしても中身は揃わないので、ユニットの内訳まで見たほうが確実。
低音用を中に入れるか外に出すか|同じメーカーで並べると差が出る
選ぶときにいちばん効くのがここです。低音を担当するスピーカーを、バーの中に入れてしまうか、別の箱として床に置くか。
ヤマハには、この2つが揃っています。しかも都合のいいことに、バーの外形寸法は2機種ともまったく同じ910×68×133mm。違うのは低音の置き場所と出力だけ、という比較ができます。
| SR-B30A(内蔵) | SR-B40A(別体) | |
|---|---|---|
| 低音用スピーカー | バーに内蔵 7.5cmコーン型×2 | 別の箱 16cmコーン型×1 |
| 実用最大出力 | 120W(30W×2+60W) | 200W(50W×2+100W) |
| バーの寸法 | 910×68×133mm | 910×68×133mm |
| バーの質量 | 3.9kg | 2.9kg |
| 低音用の箱の寸法 | なし | 194×419×407mm |
| 低音用の箱の質量 | なし | 8.1kg |
| 通販価格(2026年8月) | 23,680円 | 35,000円 |
差額は約11,000円で、得られるのは出力80Wぶんと16cmの口径。失うのは床のスペース40cm四方と、8.1kgの箱を置く場所です。
バーの質量が逆転しているのも見どころ。内蔵型のほうが1kg重いのは、低音用のユニット2つがバーの中に入っているからで、これは道理が通っています。
別体にすると、テレビ台に入らない箱が1つ増える
別体の低音用スピーカーは、想像よりずっと大きい。数字で見るとよく分かります。
ヤマハ SR-B40A に付く箱は194×419×407mm、質量8.1kg。ソニー HT-S400 に付く箱は192×387×400mm、質量7.3kg。どちらも高さが40cm前後、奥行きも40cm前後です。
テレビ台の扉の中は、たいてい高さ20〜30cm程度の棚になっている。そこへ高さ40cmの箱は入りません。置き場所は床、それも壁際になります。ワイヤレス接続とはいえ電源コードは要るので、コンセントの位置も見ておいたほうがいい。
それでも別体を選ぶ理由はあります。低音は箱の容積で決まる部分が大きく、厚み68mmのバーの中に入る7.5cmのユニットと、40cm四方の箱に入る16cmのユニットでは、出せる帯域そのものが違う。映画を観る目的なら、この差は素直に効きます。
つなぎ方で通る音が変わる|ARCとその拡張版
本体の性能とは別に、もう1つ関門があります。テレビとバーの間を何でつなぐか。
ソニーのサポートページによれば、ARCはHDMIの規格の1つで音声を戻すための仕組み、eARC はその拡張版です。拡張版で通るようになったのは、非圧縮の5.1ch・7.1chと、ドルビーアトモスをはじめとする情報量の多い音声形式。裏返すと、これらは拡張版でないARCでは通りません。
厄介なのはテレビ側です。レグザ Z870N の仕様表を見ると、HDMI入力は4つあるのに、注記で「HDMI入力端子2のみ対応しています」と書かれている。4つのうち1つしか使えないということです。挿す場所を間違えると、対応しているはずの音が出ないまま気づかない。
光デジタル端子でつなぐ手もありますが、通る形式は限られます。ソニー HT-S400 は光デジタル入力を持っていて、対応形式はドルビーデジタルとリニアPCM 2ch、それにAACまで。テレビ放送を聞き取りやすくする目的なら十分で、映画の立体音響を狙うなら足りない、という線引きになります。
出力がいちばん大きい機種が、いちばん高機能とはかぎらない
ここで一度、3機種を並べておきます。
| ヤマハ SR-B30A | ヤマハ SR-B40A | ソニー HT-S400 | |
|---|---|---|---|
| 低音用スピーカー | 内蔵 | 別体 | 別体 |
| 実用最大出力 | 120W | 200W | 260W(80+80+100) |
| HDMI | eARC対応 | eARC/ARC対応 | ARCのみ |
| ドルビーアトモス | 対応 | 対応 | 非対応 |
| バーの寸法 | 910×68×133mm | 910×68×133mm | 900×64×88mm |
| バーの質量 | 3.9kg | 2.9kg | 2.4kg |
| Bluetooth | 受信のみ | 5.1 受信のみ | 5.0 |
出力だけ見ると HT-S400 の260Wが頭ひとつ抜けています。ところが同じ行を右へ読むと、拡張版のARCに対応せず、ドルビーアトモスも通らない。対応形式はドルビーデジタルとリニアPCM 2ch、AACまでです。
これは欠陥ではなく設計の割り切りだと思っています。テレビ番組とセリフをはっきり鳴らすことに寄せた機種で、厚み64mmという薄さと2.4kgという軽さもそこから来ている。数字が大きい列と、機能が多い列は別だと分かっていれば選び間違えません。
買ってから気づく弱み|サウンドバーで直らないこと
推している側の話ばかり書いても仕方がないので、引っかかった点を並べます。
まず置き方。ソニーのサポートページには、バーをテレビに近づけすぎてリモコン受光部を覆うと、テレビのリモコンが効かなくなるという注意があり、リモコンが反応することを確かめながら位置を決めるよう案内されています。厚み64〜68mmの棒を画面の手前に置く以上、これは構造上ついてまわる話。
次に、比較できない機種があること。デノン DHT-S217 は寸法890×67×120mm、質量3.6kgまで公表しているのに、実用最大出力のワット数を出していません。消費電力40Wという別の数字は載っている。こうなると他社と横並びで比べる手立てがなく、選ぶ側の土俵に上げられないのが正直なところです。
値段の帯で機能が揃うわけではない
2万円台から6万円台までを一続きの帯として扱うと、判断を間違えます。同じ帯の中に、ドルビーアトモスに対応する23,680円の機種と、対応しない4万円前後の機種が同居している。価格の順番と機能の順番が一致していないので、値札で絞ると取りこぼす。
最後に、直らないことも書いておきます。サウンドバーは音を前へ出す装置であって、部屋の広さや壁の反射を変えるものではない。それに、番組ごとの音量差やセリフと効果音のバランスは送り手側で作られたものなので、機械を替えても元の差はそのまま残ります。期待していいのは音の出る位置が耳の高さへ近づくことまで、と考えておくのが妥当です。
置き場所が決まらないと、機種も決まらない
最後に、押す前に測っておくと後悔が減るところを置いておきます。
注文前に測る
- テレビの脚と脚の間の幅。バーの幅は900〜910mmが主流で、脚の間に収まらないと画面の前に張り出す
- テレビの下端から台までの高さ。バーの厚みは64〜68mmなので、この隙間が7cmを切ると画面にかかる
- 低音用の箱を置く床の面積。別体を選ぶなら40cm四方と、そこまで届く電源が要る
1つ目が特に見落とされます。バーの幅はどれも90cm前後で揃っているので、足りないのはたいていテレビ側の脚の間隔のほう。脚が外寄りに付いているスタンドなら余裕がありますが、中央寄りの1本脚だと、バーが脚の前へ出る形になります。
3つ目も先に決めておくといい。内蔵型なら不要な検討ですが、別体を選んだ場合、8.1kgの箱をあとから移動させるのはそれなりの手間です。壁際で、テレビと同じ側の面に置ける場所があるかどうかを、先に見ておいてください。
手前の話として、スマート家電がつながらない原因は規格も置いてあります。
まとめ
テレビの音が聞き取りにくい原因は、音量ではなくスピーカーの数と位置にあります。標準的なテレビは20W・2個で、そのスピーカーは画面の下部にある。上位機が上部にトゥイーターを足したり背面から天井へ反射させたりしているのは、そこを補うためです。
選ぶときに効くのは3点だけ。低音用を内蔵にするか別体にするか、拡張版のARCに対応しているか、テレビの脚の間にバーの幅が収まるか。同じヤマハの2機種で比べると、バーの寸法は910×68×133mmで同一のまま、出力が120Wと200W、価格が23,680円と35,000円に分かれました。
この記事の数字はソニー・ヤマハ・デノン・パナソニック・レグザの製品ページと仕様表から引いたもので、僕の聴感は混ぜていません。オープン価格の機種は通販の値が動くので、買う直前に現物のページで確かめてください。
※本記事はプロモーションを含みます

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