スーツを1着だめにするとき、先に終わるのはほぼパンツです。膝が出る、尻が光る、裾が擦り切れる。ジャケットのほうはまだ着られるのに、上下そろわないから捨てることになる。ツーパンツスーツは、この片減りを前提にした商品です。この記事では、パンツが先に傷む理由を当たる場所の数から説明したうえで、2本目のパンツが何回の着用から元を取るのかを、洋服の青山の公式通販に出ている実際の価格で計算します。そのうえで、買っても損になる人の条件も書きます。
傷むのはいつもパンツのほう
上下おそろいで買ったのに、寿命がそろわない。理由は単純で、生地が当たっている場所の数がまるで違うからです。
| 生地が擦れる場所 | 1日のあいだに起きること | |
|---|---|---|
| ジャケット | 肩、肘、袖口、背中の中心 | 羽織る、椅子の背に掛ける、腕を曲げる |
| パンツ | 尻、股、膝、腿の内側、裾、ポケットの口 | 座る、立つ、歩く、脚を組む、床に触れる |
ジャケットは上から吊るされている布です。体重を支えていない。対してパンツは、座るたびに尻と腿が椅子と体に挟まれて圧される。この摩擦は1日に何十回も起きます。
さらに裾は靴と床に近い。歩けば靴のかかとに擦られ、雨の日は跳ね返りを受ける。ジャケットの裾が床に触れることはありません。
そして洗濯です。今どきの量販スーツはウォッシャブルの表記があるものが多く、洋服の青山のツーパンツスーツ RG245 も、表地はポリエステル60%とウール40%で洗える仕様になっています。洗えるようになったのは進歩ですが、洗う回数が多いのは、やはりパンツのほう。
ジャケットとパンツの寿命はおよそ2対1
ここで、この記事のいちばん重要な前提を置きます。ジャケットが2に対して、パンツは1。同じ回数着たとき、パンツはジャケットの半分で終わる、という見立てです。
先に断っておくと、この2対1はメーカーが公表している数字ではありません。各社ともスーツの耐用回数を公表していないので、当たる場所の数と洗濯の回数から置いた仮定です。あとで、この比率が変わったらどうなるかも計算します。
この仮定を置くと、ツーパンツという商品の形がきれいに説明できる。
| ジャケットの着用 | パンツ1本あたりの着用 | 先に終わるもの | |
|---|---|---|---|
| パンツ1本のスーツ | 100回 | 100回 | パンツ(ジャケットは半分残る) |
| パンツ2本のスーツ | 100回 | 50回ずつ | 同時に終わる |
パンツを交互に使えば、1本あたりの着用回数は半分になります。パンツの寿命がジャケットの半分なら、2本で回してちょうど上下が同時に寿命を迎える。ツーパンツスーツは、この計算に合わせて作られた商品だと考えると腑に落ちます。
比率がずれるとどうなるか
仮定が1.5対1だったら、パンツ2本は少し余る。ジャケットが終わったときにパンツはまだ余力を残していて、その残りは使い道がありません。逆に3対1だったら、2本でも足りない。パンツ3本目を買い足すか、ジャケットを余らせるかになります。
つまりツーパンツが最も効くのは比率が2対1に近いときで、それより着方が荒い人は3本目を、優しい人はシングルを選ぶほうが無駄が出ない。自分がどちら寄りかは、これまでに履きつぶしたパンツの膝の出方で見当が付きます。
2本目の値段はいくらか
理屈が通っても、値段が合わなければ意味がありません。実際の価格を見てみる。
洋服の青山の公式オンラインストアに並んでいるツーパンツスーツの税込価格は、春夏のウォッシャブルモデルで21,945円、オールシーズンのウォッシャブル・ストレッチで39,501円、上位の品番で43,945円といったところ。今回は真ん中の39,501円を基準にします。
ここに、さきほどの寿命の話を掛けます。仮にシングル(パンツ1本)が30,000円だとすると、パンツが終わった時点で上下とも退場です。ツーパンツは9,501円高いかわりに、着られる期間がおよそ2倍になる。
| 支払い | 着られる期間 | 期間あたりの費用 | |
|---|---|---|---|
| パンツ1本のスーツ | 30,000円 | 1 | 30,000 |
| パンツ2本のスーツ | 39,501円 | 2 | 19,751 |
期間あたりで34%安くなる計算です。2本目のパンツが1本目より安く手に入る限り、この方向にしか動きません。差額がスーツ本体の半額を超えないなら、算数の上ではツーパンツが有利。
逆に言うと、判断すべきは1点だけになります。2本目のパンツの差額が、スーツ1着の半額より安いかどうか。店頭でシングルとツーパンツの札を並べて、差額を見ればその場で分かります。
週何日着る人から元が取れるか
ここまでは着用回数の話でした。次は、その回数に到達するまでの年数です。
スーツは着なくても古くなります。ラペルの幅、肩の作り、パンツの太さ。型が変わるので、着用回数を使い切る前に着られなくなることがある。体型が変われば、そこでも終わります。
| 着る頻度 | パンツ2本を使い切るまで | 判定 |
|---|---|---|
| 週5日(毎日スーツ) | 短い。2本でも足りない年がある | ツーパンツが効く |
| 週2〜3日(出社日だけ) | そこそこ。回しきれる範囲 | ツーパンツが効く |
| 週1日 | 長い。型か体型が先に変わりやすい | シングルで十分 |
| 月に数回(式典・面談だけ) | 使い切らない | シングル。むしろ質を上げる |
境目は週2日あたりだと思っています。週2日でスーツを着る人は年に約100日、2本のパンツで回せば1本あたり年50日。この頻度なら、パンツを使い切る前に型が古びる心配は小さい。
月に数回しか着ない人は逆です。2本目のパンツはほぼ新品のまま押し入れに残る。その9,501円を生地の質に回して、シングルの上位品番を買うほうが満足度は高いはずです。
自分の頻度を数える手順
- 直近3か月でスーツを着た日数を数える。4倍すれば年間の着用日数になる
- 冠婚葬祭は別枠。礼服と兼用しているなら、その日数は除いて考える
- 在宅勤務の比率が変わる予定があるなら、増えるほうではなく減るほうで見積もる
後から頼むと同じ生地が無い
「必要になったらパンツだけ買い足せばいい」。これがいちばん多い失敗だと思います。
量販店のスーツは品番で管理されていて、商品ページには春夏、オールシーズンといったシーズンの表記が付く。品番はシーズンごとに入れ替わるので、1年後に同じ番号のスラックスが並んでいる保証はありません。
しかも厄介なのは、似た生地なら見分けが付くという点です。無地の黒でも、織りの目、光沢、糸の太さが少し違えば、上下で並んだときに分かる。同じ黒に見えて別物、という状態がいちばん見苦しい。
だから2本目は同じ日に、同じ反物から取ったものを買うのが確実です。ツーパンツスーツというのは、要するにそれを最初から1つの商品にしてあるもの。後から追加できない部品を、先にまとめて渡してくれている、という理解が近い。
オーダーの場合は生地を取り置ける店もあります。ただしこれも在庫がある期間に限られるので、「あとで」を前提にするなら、その店が同じ反をどのくらい持つのかを先に聞いておくべきです。
2本のパンツは同じようには減らない
ツーパンツを買った人がやりがちなのが、片方ばかり履くことです。
履き心地が良いほう、シワが少ないほう、たまたま手前に掛かっているほう。気づくと片方が3回に2回の割合で出動していて、寿命を2倍にする前提が崩れます。
対策は単純で、クリーニングから戻ってきたパンツを奥に掛けること。手前から取れば自動的に交互になります。ハンガーの向きを変える、タグの色を分けるといった方法でもいい。要は、選ばずに済む仕組みにすること。
もうひとつ。裾上げは2本とも同じ日に、同じ靴で採寸する。後日に持ち込むと、そのときの靴のヒール高で1センチ変わることがあります。交互に履くものが1センチ違うのは、けっこう目に付きます。
2本を均等に減らすための決めごと
- 戻ってきたほうを奥へ。手前から取るだけで交互になる
- 裾上げは同日・同じ靴で。左右差ではなく本間の差が出ないようにする
- 季節ごとに前後を入れ替える。汗をかく時期に片方だけ使い続けない
生地の中身で持ちが変わる
同じツーパンツでも、生地によって前提が変わる。ここは表示を見れば分かる部分です。
洋服の青山のツーパンツスーツ RG245 は、表地がポリエステル60%とウール40%。裏地は胴裏がポリエステル、背裏がポリエステル65%と複合繊維35%という構成でした。ポリエステルの比率が高いほど、擦れと洗濯には強くなります。
一方でウールの比率が高いほど、見た目の落ち着きと通気は良くなる。毎日着て洗う前提ならポリエステル寄り、着る回数が少なくて見え方を優先するならウール寄り、という分け方が単純です。ツーパンツを選ぶ人はたいてい前者に当たります。
裏地の作りも見ておきたいところ。背抜きは軽くて夏に楽ですが、背中の生地が直接シャツと擦れるぶん、傷みは表に出やすい。総裏はその逆。パンツを2本持つ人はジャケットを長生きさせたい人なので、ここは総裏を選んでおくと足並みがそろいます。
買っても余らせる人がいる
良いことばかり書いたので、引っかかる点も並べておく。
まず、体型が変わる人には向きません。2本目を使い切るころには数年たっているわけで、その間にウエストが動けば2本とも直しに出すことになる。直し代は1本ずつかかります。1年で3センチ動いた自覚がある人は、シングルを短い周期で買い替えるほうが合理的。
次に、上に述べた回転の手間。交互に履く仕組みを作らないと、ただの「パンツが1本余っているスーツ」になります。管理がそもそも苦手だという自覚があるなら、この商品は向いていません。
3つめ。ジャケットの寿命が読みにくいという問題があります。パンツは擦れて分かりやすく終わりますが、ジャケットは肩の落ち方や芯地の癖という、見た目に出にくい壊れ方をする。パンツを2本使い切ったころにジャケットの型崩れが来ていて、結局そこで終わり、という展開はふつうにあり得ます。
そして価格帯の話。ツーパンツは4万円前後の量販モデルが中心で、この帯の上、6万円から8万円あたりになるとツーパンツの設定が減ります。良い生地を選びたい人ほど選択肢が細るので、ここは正直に書いておきます。
最後に。ツーパンツはスーツを長く着るための商品であって、良く見せるための商品ではありません。見え方を上げたいなら、同じ予算をシングルの生地と補正に振ったほうが効きます。
買うときに店で確かめる3点
最後に、売り場で確認しておくと後悔が減るところを3つ。
店頭でのチェック
- 2本のパンツが同じ番号の生地か。まれに近似色の別番手が入ることがある
- ウエストのアジャスターの有無。体型が動く前提ならここが効く
- 同じ品番の追加スラックスを取り寄せられるか、いつまで注文できるかを聞いておく
3つめが特に大事です。取り寄せられる期間が長い店なら、そもそもシングルを買って、必要になってから追加するという選び方もできる。ツーパンツを買う意味は、その追加ができないときにいちばん大きくなります。
まとめ
パンツが先に終わるのは、当たる場所が多くて洗う回数も多いからでした。ジャケットが2、パンツが1という比率を仮に置くと、パンツ2本で回したときに上下がちょうど同時に寿命を迎える。ツーパンツスーツはその形に合わせた商品です。
得か損かは、差額をスーツ半着ぶんと比べれば決まります。39,501円のツーパンツと30,000円のシングルなら、期間あたりの費用は34%安くなる計算でした。週2日以上スーツを着る人は、この差がそのまま効いてきます。
逆に月数回しか着ない人、体型が動いている人、片方ばかり履いてしまう人には向きません。2本目が新品のまま残るなら、その差額は生地に回したほうがいい。
価格は洋服の青山の公式オンラインストアに出ている税込価格を参照しました。生地の混率や価格はシーズンごとに変わりますし、寿命の2対1という比率は僕が置いた仮定です。店頭でまずやることは、シングルとツーパンツの札を並べて差額を見ることです。
※本記事はプロモーションを含みます

コメント