同じ生地でも、値段が倍違うことがあります。その差の多くは、見えない場所にある芯地と縫い方です。見た目では分かりにくいのですが、着たときの立体感と、3年後の型崩れに効いてきます。
芯地はスーツの骨格
上着の胸から肩にかけて、表地と裏地の間に芯地が入っています。これが体の上で形を作る部分です。
芯地の入れ方は大きく3つに分かれます。接着で貼るか、縫い付けるか、その中間か。
| 種類 | つくり | 立体感 | 価格 |
|---|---|---|---|
| 接着芯 | 糊で貼る | 平ら | 抑えられる |
| 半毛芯 | 胸だけ縫い付け | 中間 | 中位 |
| フルキャンバス | 全面を縫い付け | 高い | 高い |
接着芯は工程が少なく、価格を抑えられます。そのぶん平面的で、体に沿うまでに時間がかかる。
縫い付けるタイプは、生地と芯が別々に動きます。だから体の凹凸に合わせて曲がってくれる。
見分け方は胸をつまむこと
店で確かめる方法があります。上着の胸のあたりを指でつまんでみてください。
表地と裏地が2枚に分かれて動けば、芯が縫い付けられています。べったり1枚に感じるなら接着芯です。
もう1つ、ラペルの返り方を見る方法もあります。自然に丸みを持って返っていれば縫い付け、折り目がぴしっと出ていれば接着であることが多い。
この2つは10秒で確認できます。値札を見る前にやっておくと、価格差の理由が分かります。
接着芯が悪いわけではない
縫い付けが上、接着が下という話にはなりません。使い方の問題です。
接着芯が向く場面
- 毎日着て消耗が早い
- 雨に濡れる機会が多い
- 頻繁にクリーニングに出す
- 予算を生地に回したい
接着芯は水に弱いという弱点がありますが、近年のものは品質が上がっていて、簡単には剥がれません。
むしろ形が変わりにくいので、扱いは楽です。手入れに時間をかけられない人には向いている。
問題になるのは、長期間の着用で剥離が起きたときです。胸に泡のような浮きが出たら、その状態になっています。
ステッチと本切羽は機能ではない
手縫いのステッチや、袖のボタンが開く本切羽。これらは仕立ての手間を示しますが、着心地には直結しません。
| 仕様 | 何のためか | 実用性 |
|---|---|---|
| ハンドステッチ | 手縫いの証 | 見た目の柔らかさ |
| 本切羽 | 袖を開けられる | 医師の名残・実用は少ない |
| 水牛ボタン | 天然素材 | 割れにくさに差 |
| 台場仕立て | 内ポケットの補強 | 耐久が上がる |
台場仕立てだけは実用に効きます。内ポケットの周りが補強されるので、擦り切れにくい。
本切羽は袖丈の直し幅を狭めます。既製品で買うなら、直す前提のときは避けたほうが無難です。
3年後に差が出る
買った直後は、仕立ての差はほとんど分かりません。差が出るのは着込んでからです。
縫い付けの芯地は、着るほどに体の形を覚えます。肩から胸にかけて自分の丸みが移っていく。
接着芯は形が変わりません。良く言えば安定していて、悪く言えば馴染まない。
仕様を選べる形なら、予算に応じて芯地を指定できることがあります。生地を1段落として仕立てを上げる、という配分も可能です。
どちらに寄せるかは、着る頻度で決めるのが現実的です。
予算をどこに配分するか
同じ金額を、生地に使うか仕立てに使うかで結果が変わります。
| 優先 | 得られるもの | 向く人 |
|---|---|---|
| 生地重視 | 手ざわり・見た目の高級感 | 週1〜2回着る |
| 仕立て重視 | 体に沿う・長持ち | 毎日着る |
| 両方ほどほど | 破綻がない | 1着目 |
毎日着るなら仕立てに寄せるほうが元が取れます。生地は消耗するが、仕立ては消耗しないからです。
逆に、たまにしか着ないなら生地に寄せるほうが満足度は高い。着る回数が少なければ耐久は問題になりません。
肩の作りで印象が変わる
芯地と並んで効くのが、肩の中に入る詰め物です。
| 肩の作り | 見た目 | 向く体型 |
|---|---|---|
| パッドあり | 四角く張る | なで肩・細身 |
| 薄いパッド | 自然 | ほとんどの人 |
| ナポリ系 | 丸く落ちる | 肩幅がある人 |
なで肩の人がパッドなしを選ぶと、肩が落ちて頼りなく見えます。逆にいかり肩がパッドを入れると、肩だけ大きくなる。
自分の肩の傾きは、鏡の前で正面を向けば分かります。首から肩先までが急な角度で落ちていれば、なで肩です。
ここは既製品では選べません。作る側に回ったときに、指定できる項目として覚えておくと役に立ちます。
仕立てが良くても消える差
手をかけた仕立てでも、扱い方次第で意味がなくなります。
一番大きいのはハンガーです。肩の丸みがない細いハンガーにかけると、せっかく作った肩の形が数か月で崩れます。
それから連続着用です。同じものを2日続けて着ると、生地が戻る時間がない。2着を交互に回すだけで寿命が変わります。
仕立ての差は、扱いの差より小さいことがある。まず日々の扱いを整えてから、仕立てにお金を使うほうが順番として正しい。
あわせて読みたい
- 生地側から見るなら生地の番手と織りの読み方もどうぞ。
- 手入れの考え方は革靴の正しいお手入れ方法もどうぞ。
まとめ
価格差の多くは、見えない芯地の入れ方から来ています。
胸をつまんで2枚に分かれるかで見分けられます。
接着芯は扱いが楽で、毎日着る人には向いています。
毎日着るなら仕立て、たまに着るなら生地に予算を寄せてください。
※本記事はプロモーションを含みます

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