ホテルには、館内全体に漂う専用の香りがあります。ビュリーのオー・トリプル ヘリオトロープ・デュ・ペルーは、パリの最高級ホテルのひとつがその役目に選んだ香りです。公式の情報から読み解きます。
ホテル・クリヨンのシグネチャー
公式は「コンコルド広場にある伝説的なパリの最高級パラスのひとつ、ホテル・クリヨンのシグネチャーの香りとしてホテル全体を包んでいます」と説明しています。
パラスというのは、フランスが最高級ホテルに与える公式の格付けです。全国でも数えるほどしかありません。
館内に流す香りに選ばれるということは、誰にも不快でないことが前提になります。個性より受容性を評価された香り、という見方ができます。
原料の並び
公式の説明は「優しくパウダリーな白い花々の花火のようにきらめく快楽の香り」。ロマンティックなスミレと混じり合い、ウッディノート、バニラ、サンダルウッド、トンカビーンズとスパイスが加わります。
| 原料 | 役割 |
|---|---|
| ヘリオトロープ | 粉っぽく甘い花。杏仁に近い |
| スミレ | 粉っぽさと青さ |
| バニラ、トンカビーンズ | 甘さ。桜餅に似た香り |
| サンダルウッド | 白檀。落ち着いた着地 |
トンカビーンズにはクマリンが含まれます。桜餅の葉のような甘い香りを持つ成分で、近代的な調香の出発点になった素材でもあります。
太陽を追う花
公式は「常に太陽の方を向いて咲くヘリオトロープは聖人フィアクルの花ともよばれ、春の訪れを知らせる黄金色のミモザと並んでコート・ダジュールらしさを代表する花」と説明しています。
ヘリオトロープという名前自体が、ギリシャ語の太陽(ヘリオス)と向く(トロポス)から来ています。
水性香水という作り
オー・トリプルの特徴はアルコールを使っていないことです。公式は2年をかけて開発した混和性水溶液だと説明しています。香料は本来アルコールに溶かすもので、水には溶けません。そこを技術で解いた、というのがこの香水の売りです。
| 観点 | 一般的な香水 | オー・トリプル |
|---|---|---|
| 溶媒 | アルコール | 水 |
| つけた瞬間 | アルコールのツンとした刺激 | 刺激がなく、最初から香りが立つ |
| 肌への負担 | 乾燥を感じることがある | 刺激が出にくい |
| 持続 | 5〜8時間ほど | 短い。3〜4時間が目安 |
アルコールは香りを飛ばす力も持っています。それが無いぶん、拡散と持続では不利になる。肌へのやさしさと引き換えに持ちを捨てている、というのがこの香水の設計です。
香料は油に近い性質を持つため、水とは本来混ざりません。ドレッシングが分離するのと同じ理屈です。そこを混ぜたまま安定させる技術が、この香水の中身にあたります。公式が2年という開発期間をわざわざ書いているのも、そこが商品の核だからでしょう。
つけた瞬間の刺激がないという点は、実際に使う場面で効いてきます。一般的な香水は最初の数十秒がアルコールの匂いに支配されるので、人前でつけ直すのがためらわれる。その制約がありません。
つけ方と付き合い方
アルコールの刺激がないので、つけた直後から完成した香りが立ちます。一般的な香水のように「最初の数分は様子を見る」必要がありません。
持ちの短さと付き合う
- 朝と昼の2回に分けてつける
- 拡散が穏やかなので、首すじなど上半身でも失礼になりにくい
- 服より肌のほうが本来の出方をする
すれ違いざまに気づかせる種類の香りではありません。近い距離にいる人にだけ届く、と考えておくと期待を外しません。
作っているブランド
オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリーは、1803年のパリで生まれた美容薬局を2014年に復刻したブランドです。創業者ジャン=ヴァンサン・ビュリーの名前と処方を引き継ぎ、内装から包装まで19世紀の意匠で統一しています。
惜しいところ
持続が短いのは避けようがありません。アルコールを使わない以上、構造的な制約です。
価格も安くない。75mLで23,210円は、同容量の一般的な香水と比べても高い部類に入ります。
拡散も穏やかです。香りで存在を主張したい人には向きません。
試せる場所も限られます。国内の売り場は数が少なく、地方だと現物に触れる機会がほぼありません。水性香水は比較対象そのものが少ないジャンルなので、想像で買うことになりがちです。
粉っぽく甘い方向は、化粧品や和菓子を連想させることがあります。そこが好みの分かれ目になります。
どの容量を買うか
日本では公式オンラインと直営店で買えます。国内に路面店と百貨店の売り場があります。
| 容量 | 価格 |
|---|---|
| 75mL | 23,210円 |
オー・トリプルは香りの種類にかかわらず同じ価格です。選ぶ基準が値段ではなく香りだけになるので、そこは分かりやすい。
| 買う場所 | 価格 | 注意 |
|---|---|---|
| 直営店・公式 | 定価 | 試してから買える。名入れにも対応 |
| 百貨店の売り場 | 定価 | 取扱店舗は限られる |
| 通販の転売品 | 上下する | 保管状態が読めない |
ビュリーには、ボトルにカリグラフィーで名入れをするサービスがあります。店頭でその場で書いてもらう形で、贈り物にする人が多い。同じ価格でも、この一手間があるかどうかで買い物の性格が変わります。
買う前に
2万3千円を超える買い物になります。しかも水性香水は数が少なく、比較対象を持っている人のほうが稀です。少量から試す方法を持っておくと、この価格帯でも踏み出しやすくなります。
あわせて読みたい
- 水性香水の使用感を知りたいなら、ベルカンヌを実際に使ったレビューもどうぞ。
- 同じブランドのビュリー ローズ・ドゥ・ダマスはどんな香りもどうぞ。
要点をもう一度
ヘリオトロープ・デュ・ペルーは、パリの最高級ホテルが館内に使っている香りです。誰にも不快でないことを評価された、という背景を持ちます。
粉っぽい甘さが平気なら、外しにくい一本。贈り物にするときの説明もしやすい。
※本記事はプロモーションを含みます









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